シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「エルヴィス」(核心部のネタバレはないが、ストーリーとは別のところでちょいネタバレあり) 生まれながらにして異端。音楽のみならず、人生そのものがロックンロールだった反逆児の、激動の物語。

 

7月1日、TOHOシネマズなんばにて、

「エルヴィス」を鑑賞。

 

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2022年公開。

製作国はアメリカ。

 

ギネス・ワールド・レコーズにおいて、

「史上最も売れたソロアーティスト」として、

音楽史に今後も永久に名を刻むであろう、

「キング・オブ・ロックンロール」こと、

エルヴィス・プレスリーの人生を描いた一本。

 

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エルヴィス・プレスリーは、

今は亡き僕の両親が、二人して好んで聴いていたアーティストである。

 

僕が中学生になりたてくらいだった頃、

両親が、

近所の家電量販店などで販売しているような、

「懐かしのUSAオールディーズベスト」的な

CDを買ってきたのだが、

その中に数曲、プレスリーの曲が入っていた。

 

それ以前から、

「まあやっぱり、ロックはなんだかんだ言って、エルヴィス・プレスリーが一番」

といった事を、

僕は両親から何度も聞かされていて、

父親が、たまにレコードをかけていたりしたと思うのだが、

ちゃんと腰を据えて聴いたのは、

多分、このCDで聴いたのが初めてである。

 

ちなみに、当時の僕にとっては、

ロックと言えば、

ガンズ・アンド・ローゼズ」だったのだが、

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(↑ガンズ・アンド・ローゼズの若かりし頃)

 

ガンズにどハマりしていた僕が聴いたプレスリーは、

正直なところ、

「なんか音も古いし、懐メロって感じやなあ」としか思えなかった。

 

今聴いてもやっぱり、

「当時はこれが最先端で、異端だったんだな」と、冷静に分析する感じになってしまい、

「エルヴィス最高!今聴いても最高!」

とはならないが、

間違いなく言えることは、

アメリカのロックミュージックの歴史は、

この人あっての歴史だということだ。

 

この人がいたからこそ、

後の世代のミュージシャンが誕生していったわけである。

 

なので、音楽的好みはさておき、

エルヴィス・プレスリーという存在に対して、僕の中で、

リスペクトの念がある事は確かである。

 

さて、映画の感想であるが、

この「エルヴィス」を見るにあたって、

同じミュージシャンの伝記ものとして、

どうしても比較対象で思い浮べてしまったのが、

クイーンのフレディ・マーキュリーの人生を描いた「ボヘミアン・ラプソディ」である。

 

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エルヴィスとフレディは、

出自や、活躍した時代は異なるものの、

 

「不遇で肩身の狭い少年時代」

「割と若いうちから才能が開花する」

「空前のバカ売れ」

「狂ったように金を使い、遊びほうける」

「レコード会社やマネージャーに利用される」

「だんだん落ち目になる。」

「世間的には働き盛り、と言えるような年齢で死ぬ」

 

という、似たような人生の道を歩んでいる。

 

まさにカリスマミュージシャンにありがちな、

人生の落とし穴にハマってしまうのだが、

映画の出来としては、

やはり「ボヘミアン・ラプソディ」に軍配が上がる。

 

もちろん、この「エルヴィス」も、

十分と言えるほどに完成度は高いと思う。

 

エルヴィス役を務めるオースティン・バトラーの「エルヴィスっぷり」たるや、

素直に「すごい」と言えるし、

こうやって映画館の良い音響で、

エルヴィスのパフォーマンス(厳密に言うと、エルヴィスを演じるバトラーのパフォーマンス)を見ていると、

僕の両親が、

エルヴィス・プレスリーという

「今までに見たことがないタイプの」ミュージシャンに、

当時どれだけシビれたか、わかるような気がした。

 

映画の最初の方で、

まだ無名のエルヴィスが、

ベテランカントリー歌手の前座としてステージに立つシーンがあるのだが、

「誰だよ?」といった雰囲気で静まり返っている観客に向けて、

彼が、後にトレードマークとなる、

腰を振りながら歌う独特のパフォーマンスを披露した時の女性客の熱狂ぶりは、

決して「映画用に盛ってる」わけではないと感じた。

 

「ああ、本当にこんな感じだったんだろうな」という、女性客の反応。

 

まさに「大衆音楽の歴史、流れが変わる瞬間」を再現した、素晴らしいシーンだと思う。

 

さしてエルヴィスのファンでない僕でさえ、

一瞬、鳥肌が立ったくらいだ。

 

このシーンを見た時は、

「ああ、これ・・・オトンとオカンに見て欲しかったなあ」と思ったし、

「この映画を見るまでは、両親に生きていて欲しかった」と思った。

 

とにかく、このパフォーマンスのシーンは、素晴らしい。

 

それだけに、

上映時間の方は2時間40分と、

かなり長めなのだが、

個人的には、もう少し長くなってもいいから、

ライブシーンを多めに見せて欲しかったところである。

 

特にラスベガスのホテルで、5年契約の元に始まった、

豪華なバンド編成のライブは、

ダイジェスト的な感じではなく、

何曲かフルで見たかった。

 

正直言って、物足りないし、

あの「無名の歌手の衝撃の登場」をピークとしてから、

後半に行くほど、

映画としての尻すぼみ感は否めない。

 

あと、ストーリーに触れるようなネタバレではないのだが、

最後のエンドロールは、

エルヴィスではない最近のアーティストの曲(エルヴィスの曲のアレンジ?そのあたりはよく分からない)を流すのではなくて、

ボヘミアン・ラプソディ」のエンディング後と同じように、

エルヴィス・プレスリーの往年のパフォーマンス」を流して欲しかった。

 

キャストおよびスタッフのクレジットが流れていく、

「本音を言うと、早よ席を立ちたい時もある」あの時間に、

エルヴィスの全盛期のライブ映像の数々を流したら、最後まで楽しめたのに・・・。

 

ボヘミアン・ラプソディ」は、その点が素晴らしかったので、

これには、かなり残念な気持ちになってしまった。

 

公開前の予告編が、かなり興味を引かせる作りをしていたので、

かなり期待大で見に行ったが、

鑑賞直後の感想としては、

「全体としては、まあまあじゃない?」といった感じである。

 

基本的に物語は、

エルヴィスのマネージャー的存在だった、

トム・ハンクス演じる「トム・パーカー大佐」なる人物の回想のようなかたちで、

進んでいくのだが、

それもちょっと個人的に「どうなのかな?」と。

 

ちょっと僕の中では、

エルヴィスの人生を、

トム・パーカー大佐という「極めて胡散臭い人」の主観で捉えた話としては見たくなかったかも、

という気持ちが途中で生じたし、

最後の方に出てくる

「何がエルヴィスを殺したのか?」

という問いに対しての、

パーカー大佐の断言には、違和感しか感じなかった。

 

からしたら、あの断言は、

「そりゃアンタはそう思ってるかもしれんが、やっぱり、アンタの責任も大やで」

という感じである(この映画を見ている限りは、エルヴィス本人の自己管理能力に、かなり問題があると感じた)。

 

僕の希望としては、

パーカー大佐も俯瞰で捉えた、

三者目線でのエルヴィス・プレスリー物語を見たかったかな。

 

僕の評価は、100点満点で、78点。

 

それにしても、

「時代」という事もあるのかもしれないが、

ラスベガスのコンサートで、

終演後に、ステージ付近や、帰りの花道に駆け寄ってくる女性ファンに対して、

ハグはおろか、

口と口でのキスもするエルヴィスには、

色んな意味で「すげえな・・・」と思った(さすがにディープキスではない)。

 

楽屋に帰ってではなく、観衆の目の前で、である。

 

しかも奥さん、すぐ近くで見てるのに(笑)。

 

「こ、これが・・・アメリカなのかよ・・・」と思ってしまった(笑)。

 

今は(コロナ禍であるとか関係なく)、

アメリカであろうが、どこであろうが、

いちファンの何人もの女性客と、

ステージ付近でキスをするなんて論外であると思うが(ですよね?)、

昔はエルヴィス以外のアーティストでも、あんな感じだったのだろうか?

 

なんかすごい時代だな、と思いながら見ていた次第。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。