シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「余命10年」 両親が病床で死ぬリアルな瞬間をこの目で見た僕には、この映画の死の描写は色々思い出す反面、「きれいすぎて」響くものはなかった。

 

今日は、なんばパークスシネマにて

「余命10年」を鑑賞。

 

f:id:otomiyashintaro:20220313175353j:image

 

肺動脈性肺高血圧症という、

現代の医学では不治とされる難病に侵された女子大生、茉莉(まつり 小松菜奈)。

 

自分がいずれ死ぬことがわかっている彼女は、

「恋愛はしない」と心に誓っていた。

 

病気自体は治らないが、

自宅での生活を許可された退院後のある日、

地元で同窓会が開かれ、

そこで和人(かずと 坂口健太郎)という男性と再会する。

 

昔から特別仲の良い関係でもなかった二人だが、

共通の友人と共に遊んだりして過ごしているうちに、和人は茉莉に次第に惹かれていく。

 

茉莉も内心は和人の事が好きであったが、

彼に病気であることを隠し続け、

本心を見せようとはしない。

 

そして二人が辿る運命は・・・・という、あらすじ。

 

「二人が辿る運命は・・・・」などという、

思わせぶりな書き方をしてしまったが、

「あっ」と驚くような展開はない。

 

うっすらとネタバレを感じさせる言い方をさせてもらうが、

結末は、映画を見る前からおそらく殆どの人が

「最終的にはこうなるんだろうな」と、

なんとなく予想する通りのストーリーである。

 

あえて「やらしい」言い方をさせてもらうが、

「これから、まだまだ将来の展望があるだろう、という人が病気であること」を題材にした他の同タイプの映画でも見られるような雰囲気、展開、音楽の選び方、演技・・・・

良い悪いは別にして、

この作品はまさに「ザ・日本映画」という感じであった。

 

予備知識なしで見に行ったが、

最後のエンドロール前に「小坂流加へ捧ぐ」という一文が表示される。

 

この一文で「あ、小坂さんという方がおそらく亡くなられたのだな」と分かるのだが、

鑑賞後に検索して調べてみたら、

この映画の原作の小説を書いたのが小坂流加さんで、

その小坂さん自身がこの病気を患っており、

自身が書き上げた小説の刊行を見る事なくこの世を去っていた、という事実を知り、

 

これはある意味、自叙伝とも言える内容(どこまで御本人の人生とリンクしているのか、僕にはわからないが)だったのかと思うと、

なんとも言えない気持ちになった。

 

先ほどの「やらしい言い方」に加えて、

本音を言うと、

個人的にこの手の日本映画は苦手である。

 

先ほども書いたような、

他の似たような映画を思い出させるかのような「テンプレ的」とも言える仕上げ方に対して、

「感動の涙をパッケージングした商品を買わされている」かのような感覚を覚えてしまい、

映画に完全に入り込めない自分が生じてしまうのだ。

 

こんな僕の感覚を

「信じられない。なんてひねくれてるんだコイツは」

と思う方もいらっしゃるかもしれないが、

実はこの映画の鑑賞中、僕は何度か泣いている。

 

この映画の「作り」に対しては、

どうしても抱いてしまうある種の嫌悪感がありつつも、

「一人の若者がもっと生きたいと願い、苦しむ姿」自体は否定のしようがないし、

その心情は痛いほどに僕の胸に刺さってくるので、見ていて自然と涙がこぼれてしまう。

 

原作者が、作品で茉莉が患っている病気と

同じ難病で亡くなっているという事実は、

この映画を評価するにあたって、

見終わってから知ったことであるとはいえ、

それを知った以上、

「それとこれとは別」として扱うことが僕にはできない。

 

ちなみにエンドロールで製作に「電通」の2文字を見つけてしまった。

それがこのタイプの映画にうっすらと抱いてしまう嫌悪感を、また僕の中で増幅させた。

 

偶然ではあると思うのだが、

小松菜奈演じる「高林茉莉(たかばやし まつり)」という名前。

 

何年か前に電通が起こした事件の

被害者の方と名前がそっくりではないか。

 

奇しくも「もっと生きたい」と願った若い女

の物語である。

なんだかなあ・・・。

 

今回の僕の点数は、

100点満点で、70点。

 

悲しくも美しい人間愛に満ち溢れた物語であることは間違いない。

 

世間の大多数の人にとって「良作」なんだと思う。

僕も良作だと思う。

 

ただ、今日のタイトルにもあるように、

この映画の後半からクライマックスを見ながら思ったのは、

「こんなもんじゃないよ。実際の現場は」ということ。

 

まるで「苦労自慢」をしているように取られかねない言い方になってしまったが、

全くそんなつもりはない。

 

このブログでは今後、

あまり自分の苦労話はもう引き出したくないと思っているので、

(かつて掲載していたそのような類の記事も、今は下書きに引っ込めています)

多くは書かないが、

この映画で描かれる茉莉の死にゆく姿は、

少なくとも僕の見た現実に比べると、

「きれいだね」と思った。

 

「日本の映画らしいね」とも思った。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

(今日は、かなり嫌な人に思われたかもしれない・・・。けど、まあいいか・・・)