シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「きさらぎ駅」 安いCG、ダメ、ゼッタイ。

 

今回、ネタバレと言える記述があります。

作品未見の方はご注意下さい。

 

6月6日、なんばパークスシネマにて

「きさらぎ駅」を鑑賞。

 

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2022年の日本映画。

 

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ネット上の匿名掲示板「2ちゃんねる」に、

2004年に投稿された書き込みを元に作られた本作。

 

「はすみ」というハンドルネームの女性が語った、その内容は、

彼女が仕事を終え、帰宅のために、

静岡県遠州鉄道新浜松駅から電車に乗ったものの、

いつのまにか、

電車は見なれない風景の中を走っており、

その後、「きさらぎ駅」という、

今まで一度も見たことも、聞いたこともない名前の駅に到着した、

というもの。

 

彼女はそこで、この世のものとは思えない、

奇妙かつ恐ろしい体験をし、

命からがら「こちらの世界」に戻ってきた。

 

そして、

その「はすみ」の体験談を「卒業論文の題材にしたい」と思っていた堤春奈という大学生が、

「はすみ」を名乗っていた葉山純子という女性を直接訪ね、

当時の体験を聞き出そうとする・・・という、あらすじ。

 

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僕は、都市伝説系の話題に関しては、

どちらかというと好きな方(いや、かなり好き)なのだが、

「きさらぎ駅」というワードは、今まで知らなかった。

 

2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」に、

いわゆる「異世界探訪」の体験談がたびたび上がっているのは知っていたし、

まとめサイトなどで、

そのいくつかを読んだことはあるが、

それらに対して自分の気持ちが、

「興味津々」というレベルにまで至ったことはない。

 

僕は根本的に、

この手の話のほぼ全てが、

「(人々の関心を引くための)作り話、おとぎ話」と思っているし、

あるいは、

何らかの作用によってもたらされた、

「脳の錯覚」であるに違いない、と思っている。

 

ちなみに、その「何らかの作用」とは、

ある人にとっては、

白昼夢を見ているかのような体験かもしれないし、

語り手に対していささか失礼ではあるし、

無配慮なのかもしれないが、

それらは、極度の精神不安定状態や、

薬物摂取などがもたらした

「妄想」「思い込み」「幻覚、または幻視」の可能性が高い、と思っている。

 

何にせよ、都市伝説系の話の中でも、

「最も」と言っていいくらい、

異世界もの」は、個人的に関心を持てないジャンルなのだ。

 

そんな僕が、

この「異世界をメインディッシュとして扱っている」本作を見に行ったわけであるが、

物語の筋書き、設定自体は、

「思っていたほど悪くない」と感じたのである。

 

しかし、この映画に対する僕の評価は、

100点満点中、30点。

 

「設定としては悪くなかった」のに、

この低評価は何ゆえ?

との問いに答えるならば、最大の理由は、

「映像表現のチープさ」と、

「人物描写の稚拙さ」にある。

 

まずCGを用いた映像表現について。

 

もうこれは、日本映画界においての

最大の重要課題のひとつとして、

僕が常々思っていることだが、

とにかく、日本映画はCG技術がショボい。

 

予算の問題に加え、

世界に通用する人材の欠如が、主たる原因とは思っているが、

いくら、それなりの設定や世界観を携えた作品であっても、

特殊効果の安っぽさが目につけば、

それが、他の全ての良い部分をかき消すのである。

 

テレビドラマなら、まだ許せる部分はある。

あくまで僕自身の感覚ではあるが、

テレビドラマに、そこまでのものを求めていないからである。

 

お金をかけて作られた、

映像が非常に優れた、海外のドラマシリーズなどを見た時に、

「もはや映画のクオリティだろ、これ」

という言葉が出てしまう時があるが、

このような文言自体が、

映画に求めるものと、

テレビドラマに備わっていなくてもさほど気にならないものの区別を端的に示している、

と言えるだろう。

 

映画においては、僕は基本的に、

「テレビドラマでは表現しきれないもの」を見たいのである。

 

ネタバレになるが、

ある登場人物の頭部が膨らんで爆発するシーンなどは、

「はあ・・・」と、そのチープさにため息が出るし、

その他のCGを使った映像も、ことごとくチープ。

 

「こんなことなら、あえてCGを使わない方法で表現する事を模索したらいいのに」

と思った。

 

「頭部が爆発」と言えば、

僕は「スキャナーズ」という、

デヴィット・クローネンバーグ監督の出世作での、

頭部爆発シーンを知っている人間なので、

どうしても、あれを思い浮かべ、

あの鮮烈さと比べてしまうわけである。

 

(かの有名な「頭部大爆発」↓グロ映像です。

閲覧注意)

 

頭部爆発ひとつ取っても、

CGのない時代の「スキャナーズ」の映像の迫真性の方が、遥かに上である。

 

とにかく「チープなCG」は、

あらゆるジャンルの映画のクオリティを著しく下げるものであり、

特に、今作のような、ホラー映画というジャンルにとっては、致命的と言えよう。

 

それに加え、

演出、演技面における「タメの無さ」、「迫真性の無さ」と、

それらも引っくるめた人物描写の稚拙さ。

 

頭が爆発するシーンでも、その他の死亡シーンでも、

個人的には、もう少し「悶え苦しんだり」、

「恐怖におののきながら、ある程度の時間をかけて死んでいく」描写が欲しい。

 

何でも、「パッと」終わらせすぎ。

次の展開に「サクッと」行きすぎ。

 

もしかすると、

作り手に(監督の意思か、映画会社からの要求か、どちらかはわからないが)、

そこまでエグい映像作品にしたくない、

怖すぎる作品にしたくない、

テンポ感を重視したい、

という方針が、元からあったのかもしれないが、

個人的に、ホラー映画の描き方として、

それは何とも中途半端に感じる。

 

そして、

数々の「なんだかなあ・・・」なシーンの中でも、

僕が思わず、心の中で苦笑を漏らしたシーンがあって、

それは、主人公の春奈が、

「このあと間違いなく自分達を襲ってくる、と確実にわかっている人物を、襲ってくる前に殺す」というシーン。

 

春奈は、道に落ちていた石を拾い上げ、

その危険人物の頭に一発食らわせるのだが、

春奈以外の、事情を何も知らない他のメンバーは、

そんな彼女の「凶行」に、恐れおののくのである。

 

「ひ、人殺し!!」と。

 

普通に考えると、

現場は大パニックになり、

仲間割れ、もしくはその場から逃亡する人間が出るなど、

カオス状態に陥ることが予見されるのだが、

意外にもその後、全員、わりと大人しく、

春奈の「いいから、車に乗って!」の一言で、

殺人鬼としか思えない人物と共に車に乗り込むのだ。

 

「いや、なんでやねん」と(笑)。

 

これには、呆れてしまった。

「やってもうたな、この映画」という感じである。

 

そして、ガッカリするシーンの数々に加えて、

単純でステレオタイプな描き方の人物たち。

 

特に、ヤンキーの兄ちゃんの描き方が酷い。

 

この兄ちゃんの思考回路がアホすぎて、

イライラを通り越して、悲しくなるほど。

こういった人物描写にも、失笑せざるを得なかった。

 

クライマックスのドタバタに至っては、

こんな中途半端な、これまでの出来なら、

もういっそのこと、

亀梨和也主演の「事故物件 恐い間取り」のごとく、

「盛大に、コントのような活劇を見せてくれ」

という気分になったが、

そのシーンにおいても、

怖さも、スリリングさも、今ひとつ突き抜けるものがなく、とにかく中途半端。

 

(「事故物件 恐い間取り」のレビューはこちら↓)

https://shingosan.hateblo.jp/entry/2022/02/06/005536

 

すっかり冷めきった目で見ていた僕は、

このドタバタシーンでも、

「なんで、そんなところに、都合よく『武器に出来そうな木の棒』が、立てかけてある?」と、

心の中で呟きながら、

ぼんやりとスクリーンを眺めていたわけである。

 

「もったいないなあ・・・」

 

映画を見終わって、まず抱いた感想である。

 

設定や題材は悪くないのに、

色々ともったいないことをしている、

と痛切に感じた作品であった。

 

ジャパニーズホラー、もうちょっと頑張ろう。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、

ありがとうございました。