シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ」(ネタバレあり) あのロボットを葬り去っただけでも点数爆上がりです。

 

今回の記事はネタバレを含みます。

作品未見の方はご注意下さい。

 

8月24日、なんばパークスシネマにて、

「ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ」を鑑賞。

 

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1985年作品「ロッキー4/炎の友情」を、

監督・脚本・主演を務めたS・スタローン自らが、再編集した今作。

 

ストーリーの大筋の流れ自体は、

オリジナルと変わらないのだが、

今回、42分間の未公開シーンを、

元の作品にあった数々のシーンと差し替えるという、

かなり大胆な編集がなされている。

 

1985年版「ロッキー4」に対する僕の感想は、

8月21日のレビューで書いた通りである。

 

(「ロッキー4/炎の友情」のレビューはこちら↓)

https://shingosan.hateblo.jp/entry/2022/08/21/224053

 

ロッキーとドラゴの死闘に関しては、

見応えがあるものの、

家事ロボットの存在や、

音楽プロモーションのための映画か?と思わせるほどの挿入歌の連続ぶっこみ、

アメリカこそ正義」と言わんばかりの、

ロッキーの、ソ連の観衆に向けたお説教・・・などなど、

「なんだかなあ」な演出が満載の、

残念な要素も多い作品であった。

 

この残念な部分については、

実際のところ、スタローン自身が、

後になって後悔していたらしく、

この再編集版を製作するにあたって、

インタビューで以下のように語っている。

 

ドラマの中身に重点を置きたかったんだ。

登場人物の心に注目して、より感情的に、より責任感を持って。

何故このシーンを使っていない?

当時の俺は何を考えていたんだ? って凹むこともあった。

今考えると使うべきシーンは明確だから。

当時の自分の人生観に疑問をもったよ(笑)」

 

との事である。

 

そして、

スタローン自身が何度も何度も作品を見直し、

「本来あるべき姿」として、

2020年代に再び発表された「ロッキー4」に対する僕の感想は・・・・・、

 

 

最高である。

 

 

素晴らしい、の一言。

 

もちろん、先日のレビュー記事で書いた、

「普通に考えて、ロッキーがドラゴに勝てるわけがない」という、

個人的なツッコミに関しては、

今回の再編集版を見ても変わらずなのだが、

オリジナル版に対して思っていた、

「絶対コイツ要らないだろ」という要素を取り除くだけで、

こんなにも物語が引き締まるのか、

と驚嘆した次第である。

 

その「絶対要らないコイツ」とは、

もちろん、あの「家事ロボット」である(笑)。

 

今回の編集版に、ヤツは一切出てこない。

 

まさに、あのロボットの存在は、

スタローン曰く「当時の俺は何を考えていたんだ?」を表す、

黒歴史」の象徴だろう。

 

このロボットを抹殺しただけでも、

先日のレビューから、得点が20点爆上がりである。

 

オリジナル版のオープニングにおける、

星条旗がデザインされたグローブと、

ソ連国旗がデザインされたグローブが、

「バチーンッ!」と激突して爆発するという、

チープさ極まりない演出を無くしたのも、

大正解である。

あれも本当に要らなかった。

 

アポロの葬儀シーンは、

オリジナル版では、ロッキーのみが淡々とした口調で弔辞を述べており、

そのあまりの冷静な語りに、

僕は心を動かされる事が全くなかったのだが、

編集版では、それがとてもドラマチックに生まれ変わっている。

 

長年アポロのトレーナーを務めたデュークの、

アポロへの想いが詰まった弔辞に続いて(もうここで僕は泣きそうになる)、

ロッキーが嗚咽しながら、

アポロに感謝の言葉を述べるのである。

 

これには泣いた。

 

「当時から、なんでこっちを使わなかった?

こっちの方がめちゃくちゃ良いシーンやないか」

と、このシーンに、

僕は涙を流しながらツッコミを入れさせてもらった。

 

ロッキーがロシアに出発する直前に、

息子に語りかけるシーンも変更されている。

 

ロッキーは息子に、

「人生、誰が何と言おうと、自分が正しいと思ったら、やらなきゃいけない時がある」

的なことを語るのだが、

ここもオリジナル版より、

そのメッセージの熱さという意味において、

再編集版の方が断然良い。

 

「試合が怖いと思うこともあるけど、少しも怖いと感じない時もあるんだ」

といった、

聞いてる側からしたら「へえ、そうなんですね」としか言いようがない、

オリジナル版の響かないメッセージに比べて、

再編集版における、

ロッキーが息子に語りかけるメッセージの内容には、

危険な試合に挑むロッキーの決意と、

一人の男、そして子を持つ父親としての生き様が投影されていて、

三者として見ているこちらも、熱くなるものがあった。

 

その後、ロシアに移り、

基本ラインはオリジナル版とほぼ同様の、

長めに尺を取ったBGM付きのトレーニングシーンとなるのだが、

個人的には、

オリジナル版を見ていた時と比べて、

その「ミュージックPV的にも見える演出」に対しても、

個人的にはもはや、

あまり嫌悪感を抱かなくなっていた。

 

これは、やはりロボットの消失と、

その他のシーンの数々の改善によって、

作品に対する好感度が、

このトレーニングシーンに至るまでに爆上がりしてしまったからだと思われる。

 

最後の方も色々と変更されているが、

ロッキーが、

オリジナル版にはない、

共に死闘を繰り広げたドラゴの労をねぎらうシーンが追加されていて、

これも個人的に良かった。

 

オリジナル版では、

ソ連の観衆が、もはや完全にロッキーの虜になっているかのようで、

これが僕の目には、あまりにも「いびつな」光景に思えたのだが、

このロッキーのねぎらいシーンの追加などによって

この時の観衆の拍手と歓声は、

最終的に「ロッキーとドラゴの両者を讃える拍手と歓声」

とも捉えられる印象を、

幾分か生み出せたのではないかと、

僕は解釈した。

 

再編集版でも、試合の終盤で、

観衆が一斉に「ロッキーコール」をしだすのは変わらずであるが、

僕としては、

「ロッキーコールと、ドラゴコールが交錯する形」になった方が、

リアルに近いように思えるし、

その方が、

「国家の威信云々など関係無くなった、男と男のぶつかり合いに興奮、感動する観衆の姿」

というものを、より表現できるんじゃないか?

などと思ったりしたのだが、

編集マジックにも限界があるだろうし、

そもそもスタローンに、

そういうシーンを作ろうという気持ちが元々なかったかもしれないので、

まあ、ここでこんな事を言っても仕方がない。

 

僕のこの再編集版「ロッキー4」に対する評価は、

100点満点で、88点。

 

今回挙げた点以外にも、編集による変更点は他にも色々ある。

 

オリジナル版と違って、

心の込もった会話劇が強調され、

作品はソリッドに生まれ変わった。

 

今までロッキーシリーズを見たことがない人が、

いきなりこの作品から見ても、

この再編集版は十分に楽しめると思う。

 

現時点では、配信の予定は無しで、

映画館のみでの公開という事だが、

おそらく、いずれ配信はされるだろうと思う。

 

そうでないと勿体ない。

 

僕としては、この再編集版こそがロッキーの第4作目としてふさわしいと思うし、

この熱い男たちの物語を、

なるべく映画館で公開しているうちに体感してほしい。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。