シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「佐々木、イン、マイマイン」(核心部のネタバレなし) 「できるからやるんじゃねえ!できないからやるんだろ!」by佐々木

 

(6月10日、加筆訂正して再更新。)

 

6月8日、

自宅で「佐々木、イン、マイマイン」を鑑賞。

 

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2020年の日本映画。

 

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売れない役者として日々を過ごす悠二。

 

悠二は、ある日、アルバイト先に

飛び込みの営業で訪れていた高校の同級生、

多田と再会する。

 

悠二と多田は、2人で飲みに行くのだが、

そこで同窓会の話になった時、

多田が「佐々木」という男の名を口にする。

 

「佐々木」とは、

悠二たちの親友であり、

まわりの男子生徒から「佐々木コール」が起こると、

学校の中であろうが街中であろうが、

関係なく全裸になる、

という「変わり者」であった。

 

そんな佐々木から、ある日、

悠二の携帯に着信が入ったのだが・・・という、あらすじ。

 

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人によって、賛否両論、好き嫌いの分かれる作品であると思う。

 

特にラストシーンが許容できるかどうかで、

この映画の評価が割れるように思える。

 

「青春映画」という括りに入れていいと思うのだが、

「恋した、部活頑張った、夢を追いかけ努力した」などという、

「その到達点に、何らかの爽やかさを伴う青春」ではなく、

「将来の方向性が見いだせず、

悶々、鬱屈したものを心に秘めている、

どちらかというと非モテな男子たちの日常」

を描いている。

 

僕の感覚では、

女性よりも男性の方が、

この映画で描かれる少年たちに共感を覚える人間が、

圧倒的多数であるように思える。

 

僕自身、

映画の中の彼らと同じような事を経験したわけではないが、

「あー、なんかこの感じ、無性に懐かしいわ」という共感を、

そこかしこに感じることのできるシーンの数々。

 

この映画は、

売れない役者として、うだつの上がらない日々を送っている悠二の、

高校時代の回想と現在の生活シーン、

そして高校時代と高校卒業後の佐々木の回想シーンを中心に展開されるのだが、

みんなの前では、毎日ふざけてばかりで、

「愛すべきバカ」として認識されている佐々木に潜む、

普段、仲間には決して見せない「素」と「影」の描写が印象的だ。

 

映画としては、個人的に嫌いなテイストではない。

 

音楽や演出次第で盛り上げられそうなシーンも、あえて抑える感じで、

静かに、淡々と、登場人物たちの生活を描いていくこの感じは、

僕としては、むしろ「好き」な方である。

 

ただ、問題はやはり、ラストシーンである。

 

このラストシーンがどういうものなのかは、

僕の口からは言わないが、

このラストを見た時、僕が正直に思ったことは、

「これをやるんなら、

もっとその前から、佐々木中心で、

佐々木という人間をさらに深堀りした描写を見たかった」

ということである。

 

あのラストシーンなら、

悠二と、別れた悠二の彼女との何やかんやを、ほぼ無くしてもいいから、

高校卒業後、パチプロで日銭を稼いでいた佐々木が、

その後、どういう道を歩んでいったのかを見せてほしかった、と思った。

 

ラストが、

あんなにも「佐々木の真骨頂」だったせいで、

悠二と、悠二の元カノのことは、

僕の中で、単なる「おまけ」くらいの価値に成り下がってしまったのである。

 

あの荒唐無稽な

「(そうではないだろうが)佐々木が仕掛けたドッキリ?」

とも思わせるラストのアイデア自体は、

僕は好きである。

 

単純に、勢いとインパクトがあって、

非常に記憶に残るシーンだ。

 

それだけに、

「悠二が、別れた元カノと、別れたにも関わらず、

未だに一緒の部屋で暮らしている設定って、要る?」

と、思ったのである。

 

別に、悠二という人間は、

「彼女なしの一人暮らし」

という設定でも全然良かったのではないだろうか?

 

「昨日は、どんな世界だった?」と、

悠二が、朝起きたばかりの元カノに、

昨日見た夢の内容を聞いたりするシーンも、

振り返って、結局、何か意味があった?

と思ってしまった。

 

あんなにも「佐々木なラストシーン」のせいで。

 

最後に、あまりにも衝撃的で、

そしてこれまでの流れと脈絡がない、

とさえ言えるオチを持ってきてしまったがために、

僕は、それまでの途中のシーンの減点作業に入ってしまったのである。

 

惜しい。

これは非常に惜しい。

 

「たられば」を言っても仕方ないのだが、

悠二と多田が、

居酒屋で酒を酌み交わしながら、

当時の自分たちと、佐々木の思い出話に花が咲き、

印象的なエピソードに2人が言及すると、

そこから都度、回想シーンに入っていく・・・

という流れでも面白かったかもしれない。

 

そして、そろそろ「宴もたけなわ」というところで、

佐々木から着信が入る・・・という演出だと、

ダイナミズムに溢れる展開にできたかもしれない。

 

ちなみに、この居酒屋のシーンで、

「悠二が、他人のグループにケンカをふっかける」というシーンも、

これまた身も蓋もない言い方になるが、

僕には「不要」に思えて、

この作品において、何か重要な意味を成している、とは思えなかった。

 

僕の評価は、100点満点で、60点。

 

最後のシーンは、あれはあれでいいとして、

それなら、

「佐々木って、ある意味、『江田島平八』なんじゃないか?」と、

思わせる前フリ、伏線、伝説的な回想シーンがあっても良かったのかもしれない。

 

口酸っぱく言うが、

悠二と元カノの話に割く時間を、そっち(佐々木)にまわしてほしかった。

 

ちなみに「江田島平八」が、

誰の事かわからない人のために説明すると、

江田島平八」は、

かつて週刊少年ジャンプにて連載していた人気漫画「魁!男塾」に登場する

不死身級のキャラクターである。

 

江田島平八↓ 決めゼリフは「わしが男塾塾長、江田島平八である!」)

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ということで、最後になぜか江田島平八が登場してしまったが、

これがラストシーンのヒントになっている。

 

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。