今回の記事は、核心部のネタバレが含まれています。
作品未見の方は、ご注意ください。
6月3日、自宅で「前科者」を鑑賞。
2022年の日本映画。
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阿川佳代(有村架純)は、
刑務所を仮出所した者たちの保護観察を担う
「保護司」として活動する女性。
ある日、殺人の罪で服役していた工藤誠(森田剛)という男が、
仮釈放された後、阿川の元を訪れる。
工藤は口下手で、人と接するのが苦手な一面があったが、
阿川のきめ細かい対応や、励ましなどによって、
徐々に普通の生活を取り戻していく。
順調に更正の道を歩んでいるかに見えた工藤だが、
ある日、一人の挙動不審な男が、工藤の目の前に現れる。
そして、この男と出会ってから、
工藤の人生の歯車は、再び狂い出すのであった・・・・という、あらすじ。
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雑誌「ビッグコミックオリジナル」で連載中の漫画が原作の本作。
テレビドラマ化の後、
ドラマの数年後を描いたオリジナルストーリーとして、映画化された。
漫画もドラマ版も、僕はどちらも未見。
映画公開時から、その高評価ゆえ、
気になっていた作品であるが、
今回見て、それについてはある程度、納得できた。
語弊のある言い方かもしれないが、
映画として、とても面白い(もちろん、笑えるとか楽しい、という意味ではない)と思う。
正直なところ、有村架純が演じる、
阿川佳代というキャラクターについては、
良くも悪くも「魅力がありすぎて」、
犯罪者に寄り添う「保護司」を描いた物語としては、
幾分、現実感が伴わない節があるし、
(現実の世界の保護司の方々が、魅力がないと言っているわけではない。誤解のないように)
ところどころに「それはやりすぎだろ」というシーンがある。
「保護司」という職業(非常勤の公務員であるが、給料が発生しないため、事実上のボランティアと言える)の詳細や実態を、
この映画で学べるのか?
という観点から見ると、
そのあたりはあまり期待できず、
全体的に、犯罪サスペンス、
もしくは犯罪ミステリーもの、としての側面が強いように思われる。
それはさておき、
何と言っても、
本作品で僕の目が釘付けになったのは、
元V6の森田剛の演技である。
工藤誠という、
非常に不運な境遇に人生を翻弄され、
ついには殺人を犯してしまった男を演じているのだが、
工藤が抱える影と、その影から湧き出る苦悩と激情を見事に表現した、
と言える森田剛の演技には、目を見張るものがあった。
アイドルグループ出身の彼ではあるが、
この人は、本質的に「役者」なのだ、と思った。
現役か元かは問わず、
「アイドルの肩書きを持った人が、何かを演じている」のではない。
「ひとりの役者が、役そのものになっている」のである。
意外、という言葉を使うと、
大変失礼にあたるが、
僕は今まで森田剛という人の演技を見た事がなかったので、
今回、この映画で、その演技を初めて見て、
ここまで素晴らしい役者とは思わなかった。
今後、年を重ねていくにつれ、
「もはや味しか出ない」と思わせる、
名演を披露した森田氏には、
更なる飛躍を期待したい。
他の演者では、
工藤の義父を演じるリリー・フランキーが、
素晴らしいと思った。
あの人の演技も、自然すぎるというか何というか、
あのような雰囲気の独居男性を演じさせたら、
右に出る者はいないんじゃないか?
と思わせるものがある。
この映画の僕の評価は、
100点満点で、80点。
噂に違わぬ良い作品であったが、
数々のツッコミどころがあり、
それらが評価を下げているのも、また事実。
その代表的なものとしては、
物語冒頭で、
阿川が観察対象者(いわゆる前科者)の
部屋の窓ガラスを叩き割ったり(こりゃもう器物損壊である。保護司が犯罪を犯してどうする)、
刑事二人が、入院している警察官から、
拷問と言える方法で証言をとったり(これも立派な犯罪である)、
阿川が、これまた別の観察対象者から酒を勧められて、
「規則で対象者の方とは、飲んではいけないんです」と言いながらも、
「けど・・・1杯だけなら・・・」と、
酒を飲んでしまうまでは、まだギリ許せるとして、その後ベロンベロンになって、
気がついたら朝になっていたり(保護司として相当マズいだろ、これ)、
何と言っても、
僕が「おいいい!」と思ったのは、
映画のクライマックスで、
連続殺人を犯している工藤の弟が、現行犯逮捕された時、
刑事が工藤の弟に、手錠をはめていなかった事である。
これにより、動きの制限が無くなった弟は、
刑事から拳銃を奪うことになるのだが、
普通に考えてヤバすぎるでしょ?これ。
まさに人を殺そうとしていた人物を、
複数人で取り押さえて、
そいつをパトカーに連行する時に、
手錠をはめていないなんて・・・・あり得なくないだろうか?
僕は、警察関係者ではない一般人なので、
このあたりの規則的な事はわからないのだが、
このシーンを現職の警察官や刑事が見たら、
どういう見解を示すのだろうか?
ここで使わなかったら、何のための手錠なのだろう?と思ったシーンであった。
僕としては、このシーンだけで、
マイナス10点である。
ちなみに、
阿川がベロンベロンに酒に酔うシーンに話を戻すが、
ここは映画の流れ云々とは別の次元で、
「有村架純、かわいい」と、不覚にも思ってしまった(笑)。
「あかんだろ、これ。保護司として」などと思いつつも、
ちょっとミーハー心が出てしまった。
まあ、本当に可愛いと思ってしまったのだから、仕方がない(笑)。
という事で、
数々の「惜しい」箇所がありつつも、
一応、最初から最後まで、飽きずに楽しめたこの作品。
現在、Amazonプライムでドラマ版も見れるらしいので、
時間があれば見てみようかと思っている。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。