「ソウルフルワールド」を鑑賞。
100点満点で、97点。
数年前の完成当初は劇場にて公開予定であったが、その当時、コロナ禍の直撃によって劇場での公開を断念。
2020年にDisney+で配信されたが、2024年に、晴れて映画館での公開が実現した作品である。
ハッキリ言ってしまうが、紛れもない傑作であると思う。
僕はこういう言い方は極力避けたいので、普段はそのような感情を抱いてしまった時があるとしても、あえてそれを抑え、言わないように気をつけているのだが、今回は批判されるのも覚悟で、次のように言ってしまおう。
まだ社会経験に乏しい子供はさておき、
この作品を見て何一つ思わない、あるいは何一つ心を動かされないような社会人とは、僕は友達になりたくない。
子供の頃からプロのジャズピアニストとしてスポットライトを浴びる事を夢見て、
その夢の実現こそが自分を幸せに導いてくれると信じて疑わない、音楽教師の主人公ジョー・ガードナーは、ある日、遂にその夢を叶えるチャンスを掴むが、
その直後、自らの不注意によってマンホールに落下してしまい、命を落としてしまう(厳密に言うと半生半死みたいな状態であるが、僕の解釈では、ひとまず「命を落とす」と表現する)。
しかしジョーは、「せっかく掴んだチャンスなのに!僕はまだ死ぬわけにはいかない!」と、必死の抵抗をして、
すったもんだの末、地球に生まれる前のソウル(魂)たちが集い戯れる世界にたどり着いてしまうのだが、
まあなんというか、そのあたりからのラストまでの脚本の素晴らしさ、ストーリー進行のテンポ感、圧巻のグラフィック、思わずクスッとなってしまう登場キャラクターの台詞回しも含めた小ネタ、泣ける演出・・・などなど、
これぞまさに「ピクサーの本領発揮」といった感じで、終始色々な種類の感動を堪能することができた。
劇中に流れるジャズナンバー(演奏シーン)がこれまた最高。
めちゃくちゃカッコいい。
「幸せは、あなたが望む未知の憧れの世界に実際にあるのかもしれないけれど、実はすでにあなたのまわりに沢山あるんですよ」といったメッセージは、
この映画に限らず、歴史上のこれまでのあらゆる文学や演劇、歌の歌詞などに何度も何度も込められてきたものであって、特に目新しいものではないし、
ややもすれば「はいはい、出ました。また『日常の些細な事に感謝の心を忘れずに』ですねー」と、
僕自身も油断していると、ついつい思いがちであるが(反省しろ俺)、
この映画を見ていると、
素直に「そう。そうなんだよ。高望みする場所が全てじゃないんだよ」と、従順でピュアなハートになってしまうのだから、あら不思議(笑)。
「ピクサーマジック(ディズニーマジックとも言える)に、してやられたり」と言ってしまうと、それはそれで、またヤラしい捉え方になってしまうが、
説教臭く感じさせずに、このような忘れがちな真理を、社会に揉まれて汚れちまった我がハートに、スッと染み込ませてくるのだから、
これはもうまさに「ピクサーあっぱれ」としか言いようがない。
ツッコみどころに関しては、無い事は無いが、それもまあ重箱の隅をつつくようなレベルのものであるし、それよりも何よりも感動の方が上回り過ぎて、んなこたぁどうでもいい、という感じである。
ちなみに、劇場を出て「あらゆる事に感謝感謝。ルンルン♪」と、
心が洗濯されたような感覚になった僕は、その後の帰り道で地下鉄に乗り込んだのですが、電車を降りた時に、慌てて駆け込んでくる人とぶつかりそうになって、案の定「チッ」となりました(笑)。
自分の心、何も変わってなかった(笑)。
現世での修行はまだまだ続く。