今日はTOHOシネマズ梅田にて、
「コーダ あいのうた」を鑑賞。
聴覚障害を持つ両親と兄がいる4人家族の中で、
唯一の「健聴者」であるルビーが経験していく、青春と葛藤、苦悩を描いたドラマ。
17歳のルビーは高校に通う傍ら、早朝から漁船に乗り込み、父と兄が営む漁業の手伝いをする毎日。
ルビーの存在なしにはスムーズに仕事を進める事ができない、と言えるほど、
手話も使える健聴者ルビーの「通訳」に頼りっきりの家族。
そんなルビーが持つ歌の才能に可能性を見出した、高校の音楽教師であり合唱クラブの顧問ベルナドは、
ルビーに「バークリー音楽大学で専門の教育を受けるべきだ」と、進学をすすめるのだが、
もし進学できた場合、ルビーが家を出てしまうことによる家族への影響は大きい。
ルビーと家族が出した答えとは・・・・
というのが物語の概要。
ひとまず見終わっての感想をひと言。
素晴らしい映画です、これは。
記事のタイトルにもあるように、
ストレートに「素晴らしい」と称賛したい傑作だと思う。
僕の評価は100点満点で、97点。
ちなみに、この映画は2015年に公開されたフランスの映画「エール!」の米国版リメイクであるという事を、
僕は見終わってから知ったのだが、そちらの方は未見。
家族という共同体で生活していく中での、
ルビーを含めた各人がそれぞれに持つ主張、複雑な思いを、
ひねりのきいた展開や、映像的装飾なく描ききったまっすぐな作風に好感が持てるし、
何よりも劇中に流れる、ルビー演じるエミリア・ジョーンズの歌唱が素晴らしい。
ジョニ・ミッチェルの名曲(曲名はある種のネタバレになるので伏せておこう)を
歌い上げるルビーの魂の歌声に、落涙を抑えることができなかった。
劇中には、しばしば「セックス」の話題が上り、
もし親子や家族団欒でこの映画を見ていたならば、多少の気まずさを覚えるものがあるかもしれない(この映画はPG12指定)。
僕は過去の他の作品のレビューで、
何度か「セックスシーンはこのような(エンタメ系)映画には入れて欲しくなかった」
という事を書いていたりするが(例えば「マトリックス リローデッド」とか「エターナルズ」とか)
(「マトリックス リローデッド」のレビュー↓)
https://shingosan.hateblo.jp/entry/2021/11/07/010236
(「エターナルズ」のレビュー↓)
https://shingosan.hateblo.jp/entry/2021/11/18/004556
こういうリアリティに根ざした人間ドラマに関しては、セックスのシーンは、
受け手によって印象はそれぞれだと思うが、
妙に過剰に表現していない限り、まあ、あっていいんじゃないだろうか。
今回、この映画にここまでの高得点を出したのは、
私事で恐縮だが、もしかしたら、両親を数年前に亡くしたことで、
近年、余計に「家族」という存在のかけがえのなさを意識するようになった、僕の心の移り変わりが影響しているかもしれないし、
45歳という年齢で、ますます色々な事に対して涙もろくなってきている僕の年齢的なものも影響しているかもしれない。
あるいは、先日見た「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」という、
レジェンド級のクソ映画(←もはや褒め言葉として使っています。いやホントに)を見たせいで、
無意識のうちに受けたショック状態(まあ大げさですが)を中和してくれる、
「解毒剤的な」映画を欲していた(笑)せいかもしれない。
(「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」のレビュー↓)
https://shingosan.hateblo.jp/entry/2022/01/31/003041
いずれにせよ、奇をてらったような場面がほぼ一切ない人間ドラマを、久しぶりに見たような気がする。
少し気になったのは、
ルビーの家族は、対外的なコミュニケーションの場面において、いかなる時もルビーに頼りっきりだったが、
ああいうのって、政府とか自治体の補助制度とかボランティアなどを利用して、
折々の場面で、ルビー以外の通訳の人のサポートって受けたりできないものなのかな?
と思ったりした。
まあこのあたりは、
僕自身、アメリカの法律についても、聴覚障害者を取り巻く法整備の事についても、
何の知識もないので、これ以上の詳細には踏み込まないが。
ただ、実際にああいった家族の状況があった時に、
なんでもかんでも当事者家族の努力だけでしか対処できないのかな?と、素朴に思い浮かんだ次第。
特にそんな事を思ったのは、
ちょっとだけネタバレっぽくなって申し訳ないのだが、家族がテレビの取材を受けた時とか。
気になったのは、そのあたりぐらいかな?
あとはとにかく「見てよかった」と素直に思えた、良い映画だった。
という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。