今日はTOHOシネマズにて「フリー・ガイ」という映画を鑑賞。
少し前に同劇場で予告編を見た時は、
「別にコレはええわ。スルーしよ。」と思っていたのに、
一昨日の晩になったら、
「さて、次の休日は何を観ようかな?
『フリー・ガイ』か・・・。ああ、前に予告編見て、あんまり刺さらんかったやつやな。
・・・けど、ユーザーレビュー高いな・・・
(この間1秒もない)よし!これ観よう!」となっているのだから、
悪く言えば、全くもっての風見鶏(かざみどり)野郎。
良く言えば、みんなのオススメに素直な人である。
さて、あらすじだが、
映画の主人公「ガイ」はオンラインゲーム内でモブキャラという役割を与えられており、最近のオンラインゲームなどの用語にあまり詳しくない方にざっくり説明すると、ドラクエで言うところの「街の人」的なキャラクターである。
このモブキャラはゲームという再現性を有する娯楽の中で、作り手がプログラミングした通りに決められた動きをし、会話をする。
ゲームの秩序を乱し、プレイヤーのゲーム進行を妨げるような「逸脱行動」は決してしない。
「ガイ」はゲーム内では真面目な銀行員という役柄を与えられており、朝起きたら飼っている金魚に向かって決められたセリフで目覚めの挨拶をし、出勤前に馴染みのカフェに通って、いつも同じコーヒーを注文。
道行く街の人や勤務先で会う警備員を務める親友(彼ももちろんモブキャラ)と毎日同じ会話をし、
勤務先に銀行強盗(これは実際の人間が動かしているキャラクター)が襲ってきたら、毎回同じように抵抗せずに両手を挙げ、床に這いつくばる・・・という日々に何の疑問も抱かずに生活している。
疑問など抱きようがないのだ。
なぜなら彼は「行動を決められたモブキャラ」なのだから。
しかし、そんなある日、あるプレイヤーが操作する女性キャラに一目惚れした「ガイ」はプログラミングされていなかったはずの恋に堕ちてしまう・・・
というもの。
この映画を見ていて僕が頭に浮かんだのが
「マトリックス」、
「トゥルーマン・ショー」、
「レディ・プレイヤー1」の3作品。
僕が思う、これらの作品と今回見た「フリー・ガイ」に共通するテーマは「自分が住んでいる現実世界こそが、世界の全てなのか?」という事。
テイストとしては「トゥルーマン・ショー」に最も近いと感じた・・・というか、
もっと突っ込んで言うと、これは「ゲーム版トゥルーマン・ショー」。
映画の面白さについて言えば、途中まで
「ちょっとこの映画は人を選ぶなあ」と思いながら見ていたし、
ましてゲーム(特にオンラインゲーム)に全く興味や知識のない人なら、この作品で使われる「用語」や、全体に流れる「ノリ」というか「世界観」に全然入り込めないんじゃないかなあ?なんて分析的に見ていた。
・・・が、物語も最終局面になると、泣きそうになっているのである。
誰が?
僕が(笑)。
「いや、これ・・・人間じゃなくて(演じているのは人間の俳優さん・・・ってややこしいか)ゲームのモブキャラが頑張っているのに、何で俺、泣きそうになってるの?」
と、(泣きかけているのだけれども)ちょっと自分自身に笑いそうになりながら見ていた。
通常、この名前も覚えられることがないモブキャラの奮闘ぶりにカタルシスを感じて、心に何か熱いものが芽生えてしまう自分を呼び覚まされた人は僕だけではないと推測する。
そして、奇想天外な発想かもしれないが、この映画を見ていて、こうも思ったのだ。
「毎朝、同じ時間に起きて、電車に乗って仕事場に行き、帰宅したら限られた少ない時間で自分のやりたい事をし、翌朝また同じ時間に起きて仕事場に向かう俺は、本当に『自分の意思』で動いているのか?俺は、ある意味このモブキャラになっていないか?」と。
最近、最先端の哲学や物理学の世界で
「我々の生活するこの世界は、実は我々を動かす高度な文明、あるいは高次世界の存在によって、自然発生的ではなく人為的にシミュレート(模擬)されているのではないか」という
「シミュレーション仮説」という説が浮上している。
この説については、現代の科学的知見では検証不可能であるし、今後も未来永劫、この世の真実はわからない可能性が高いと思われる。
しかし、こうやって今日、映画を観ていた自分や、オンラインゲームでキャラを操るあなた、
自分の目に映る世界の中からのみ与えられた提供物の中で幸せを探し続ける、または幸せを感じている全ての人々が生きているこの世界は、これ以上の俯瞰で観察できない「最高次元の世界」なのだろうか?
・・・そんな事をぼんやり思い浮かべながら映画を楽しんでいたが、モブキャラに感情移入してしまう感性が通常になった人類が、本当に大事にした方がいいことは何なのか?というメッセージも、最終的に嫌味なくいい具合に織り込んで、
僕としては予想以上に楽しめた作品であった。
100点満点評価で83点。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。