昨日は、自宅で「インセプション」を鑑賞。
2010年公開で、当時はけっこう話題になっていた映画だが、僕は見たことがなかった。
個人的な話で恐縮だが、
2010年前後の僕は、もっぱらゲームにハマっていた時期で、
このあたりの時期に公開された映画は、あまり見ていなかったりする。
最近、Amazonプライム・ビデオのおすすめに、この作品がいつも出ていて、
気にはなっていたのだが、
公開から約12年経って、昨日ようやく見ることにした。
僕は映画を見る前、
作品によって、あらすじを読んだり読まなかったりと、まちまちなのだが、
今回は、この作品がどういった物語かほとんど知らずに見始めた。
冒頭、レオナルド・ディカプリオが浜辺で倒れているシーンから始まるのだが、
しばらくの間、
僕の頭の中は「???」といった感じで、
物語の概要が全く掴めない。
新幹線のぞみの車内のシーンに移り、
どうやら登場人物たちが動いていた世界は
「夢の中」と「その夢の中で見ている、さらなる夢の中」ということはわかったのだが、
ここまでの色々な情報量が整理できず、
僕の頭は混乱したまま。
「あ・・・・やべえ。
これは、難解なだけで、結局のところ、つまらないまま終わるやつなのか・・・」
という不安がよぎる。
しかし、僕は一度見始めた映画は、
最後まで見なければ気が済まないタチなので、
気を取り直して見続けていると、
登場人物のセリフのやりとりから、これがどういう物語なのか、だんだんとわかってくる。
ディカプリオ演じる「コブ」という男は、
他人が見ている夢の世界に侵入(標的とする他人と夢の世界を共有)し、
情報を抜き取る産業スパイのようなことをやっている・・・ということや、
渡辺謙演じる「サイトー」は、コブに仕事を依頼している人物であること、
そしてコブが今回、挑もうとしている事は、
夢の世界から「情報を抜き取る」のではなく、
夢の世界において、
標的となる人物に「あるアイデアを植え付ける」こと、
そして「アイデアの植え付け」は容易なことではなく、ほぼ不可能かもしれず、大変なリスクと労力を伴うこと・・・・
などなど、
見ているうちに、目の前に雑然と散らばっていたジグソーパズルのピースがハマっていくような感覚で、
物語の概要と、主人公たちの目的がわかってくる。
この「わかっていく」感覚が気持ちよく、
僕は「ほうほう、なるほどなるほど」と、
途中からは、この映画の世界観にすっかり魅了されてしまった。
「あら、なにこれ、面白いですやん・・・」
冷めた目で見れば、「他人と同じ夢の世界を共有する」技術など、
現在の科学技術にはなく、
この映画の根本設定はあまりにも荒唐無稽なのだが、
シナリオの巧妙さと、圧巻の映像表現の成せる技なのか、
そんな「トンデモ設定」は、
少なくとも僕にとってはどうでもよくなり、
緊張感を失わず展開される「夢物語」に、ただひたすらに唸っていた。
これはまさに、ハリウッドだからこそ作れる映画である。
主人公たちのチームが、夢の中に入っている間であっても、
眠りに落ちる前の自分たちの目的をはっきりと認識し、
共有しあって行動する様を見ていると、
「ハッ」と思いつくことがあった。
「最近、話題のメタバースって、まさにこれやん」と。
近年「メタバース」という概念が、以前にも増して取り沙汰されるようになってきているが、
僕は今のところ、
あの「VRゴーグルをつけて、ネット上の世界で活動する」というアクティビティに懐疑的である。
あれが、ここからどのような進化を見せるか、僕には正しい予測ができそうにないが、
現時点の「視覚と聴覚」だけのメタバースについては、
「こんな、いちいちVRゴーグルをつけないと体験できないようなものは、一部の愛好家の趣味止まり」
で終わりそうな気がしてならない。
もちろん、そこから予想だにしなかった劇的な進化があるかもしれないので、
僕の「メタバースは企画倒れに終わる」という予測は外れるかもしれないが、
この映画を見て、「メタバース」を完成させるなら、「夢」を利用すればいいんじゃないの?
と思ってしまった。
無理っぽいけど(笑)。
「マトリックス」は、首の後ろにプラグを繋げられて、
仮想世界を見せられている人間たちは、
「ここ(仮想世界)こそが現実」と信じているが、
「インセプション」の主人公たちは、
自分たちが見ている夢は「夢とわかっている」のである。
(厳密に言うと、現実と夢の区別がつかなくなった人が登場するのだが、ここは最重要ネタバレ箇所なので、これ以上の言及は避ける)
この「今、自分が『夢を見ている』と自覚している夢」を「明晰夢(めいせきむ)」と言うのだが、
これを他者と共有する「場」が存在し、
そこに自分の意思で好きな時に行けるようになれば、
これはまさに「メタバース」なのではないだろうか?
僕の言っていることは、現時点で、間違いなくこの映画より荒唐無稽であると思うが、
実現すれば、こんなに面白いことはないし、
こんなに恐ろしいことはないと思う。
そう、それは究極に面白い世界であると同時に、究極に恐ろしい世界であると言える。
具体的に言うと、「自分が見たい夢の世界から抜けたくない」または「抜けきれない」人間が続出する世界である。
この「僕の考えるメタバース」が実現すれば、
もしかしたら人類は、体を持つ必要がなく、
「培養された脳細胞」だけで存続していくかもしれない・・・。
とまあ、話が脱線してしまったが、
そんな僕の妄想は置いといて、
この映画には「トーテム」という持ち物が登場するのだがら
これが重要な意味を持ってくるので、
まだこの映画を未見で、これから見ようと思っている人は、
「トーテム」の説明箇所だけは、
さらっと流し見して、後になって「これなに?」とならないようにお気をつけいただきたい。
ネタバレになるので言えないが、
個人的にラストシーンが秀逸。
僕の評価は100点満点で、90点。
クリストファー・ノーラン監督の他の作品は、
「インターステラー」が気に入っているが、
この「インセプション」も凄い作品だ(ちなみに同監督の「テネット」は何がなんだかよくわからなかった・・・)。
繰り返すが、ハリウッドの凄さが凝縮されている一本。
という事で、
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。