シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

【ネタバレなし】「PERFECT DAYS」 今の自分にできる事をちゃんとやる。人生は結局それに尽きると感じた。そして、それはそれで「完璧」なんだと思う。

 

「PERFECT DAYS」を鑑賞。 

100点満点で、71点。


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東京でトイレ清掃業に従事する男性の日常を描いた作品である。


結論的に、良い作品だと思ったが、
もし他の人に、「この映画、私は面白いと思わなかったんですけど、これのどこが面白いんですか?」と言われたら、
僕も思わず、
「・・・そうよな。何が面白いのかな?俺もよくわからん」と答えてしまいそうである(笑)。


けれど、個人的にはなんだか良かった。


朝起きて、
車に乗って現場に着いたらトイレ掃除をして、
仕事が終わったら銭湯に出かけて、
その後は行きつけの飲み屋でゴハンを食べて、
家に帰ったら、布団に寝そべりながら文庫本を読んで、
「あー、ねむー」となったら寝て、
また朝起きて、車に乗って・・・、
というルーティーンが劇中、何度も何度も繰り返される。


そして、その繰り返しの日々の中で、
事件というには大袈裟な、
しかし、ちょっとしたハプニング的な事に出くわす日もあって・・・という描写が淡々と描かれるのだ。


役所広司演じるトイレ清掃員は独身で、
風呂なしの古びたアパートに住んでいる。


普段から自炊をしている様子はなく、
仕事中の昼休みはコンビニ食品。


夜は、先ほども書いたように、行きつけの地下街にある飲み屋で食事を済ます。


趣味は、神社に生えている木の葉っぱの間から木漏れ日が漏れる様子を、フィルムカメラで撮影したり、
木の根っこ付近に生えていた植物を摘み取って、植木鉢に植え替え、自宅で毎日水をやって育てること。

古本屋で買った文庫本を読むこと。

車で移動する時は、カセットテープで往年の名曲を聴くのも、彼の楽しみの一つのようだ。

 

いつも基本的に一人で過ごすその生活に、

華やかさなんてものは、へったくれもない。


彼は基本的に、非常に無口な性格なのだが、
その事が余計に、生活の質素ぶりを際立たせるようにも見える。


淡々とスクリーンに映し出される、
彼の日々の様子をボーッと眺めていると、
彼とは仕事と趣味の内容こそ違えど、
同じく独身中年の僕は、
「なーんだ。これ、俺のことやん」と思ってしまった(笑)。


この、「あ、ここにも俺みたいな人がいる」という、
ある種の「仲間、見つけました感」を感じてしまった事も、
僕がこの作品を良いと思った理由の一つなのかもしれない。


彼が、今の自分の生活を「幸せ」と感じているかは、映像を見る限り全く分からないが、
「独身という状態を最大限に活用している」のは確実に分かる。


僕も年季の入った独身者なので(笑)、
それだけは手に取るように分かるのだ。


どんなルーティーンで生活しても、
どんな趣味に手を出そうとも、
どこで何を食べようとも、
同居人のいない独身者は、自由である。


孤独ではあるが、その分、自由度は確実に高くなる。


おそらく彼にも独身ならではの色々な悩みや苦しみがあるだろうし、
将来に対する不安を感じない日も無いことは無いだろう。


しかし、このトイレ清掃員の彼は、
自分の人生を真面目にしっかりと生き、トイレ清掃という仕事を通して、社会にコミットしている。


この人生を誰が否定できようか。


その生活において、時にふと現れる様々な揺らぎに翻弄される事はあっても、
自分の選んだ人生に向き合い、ひたむきに生きる人の日々は、
作品のタイトルのように「完璧」なのかもしれない。


作品の終盤にかけて、
彼の心に大きな波紋を生じさせる2つの出来事が起こるのだが、
その2つの成り行きを見て、
「本当の幸せってなんなんでしょうね?」というような事を、またしみじみと考えてしまった。


そして最後のシーン。


今回はネタバレを避けたいので、詳しく言及しないが、
鑑賞者が想像する余白を提供してくれる、
あのような終わり方は個人的に大好きである。

 

最初の方にも書いたように、
人によっては「何が面白いのかさっぱり分からない映画」かも知れないので、
「万人には勧めないが」という意味合いも込めて、これくらいの点数にさせていただいた。


そして、この映画を見たことで、
あらためてトイレ清掃員の方々に感謝の念が湧いてきたので、この場を借りて、お礼の言葉を言わせて下さい。

 

「トイレを掃除してくださる方々へ。
毎日、本当にありがとうございます。感謝しております」

 

全てのエッセンシャルワーカーに幸運を。