昨日は天王寺のアポロシネマにて、
「MINAMATAーミナマター」を鑑賞。
日本人なら学校の社会の時間で、一度はその名称を聞いた事があるだろう「水俣病」という公害病。
あらためて、どのような病気かおさらいするために、ウィキペディアから説明を引用させていただいた。
「水俣病(みなまたびょう)とは、メチル水銀化合物(有機水銀)による中毒性中枢神経系疾患のうち、化学工場などから環境に排出された同物質によって汚染された海産物をヒトが経口摂取したことにより集団発生した公害病である」
・・・という事で、水俣病に限らず、
このような公害病は、日本のみならず、世界中の経済成長の裏側で今でも起こり続けている、最も大きな社会問題の一つである。
この映画は、実際に熊本県水俣市に赴き、現地の様子を取材したアメリカ人フォトグラファー、ユージン・スミス氏にスポットを当てた内容になっている。
スミスを演じるのはジョニー・デップ。
何の前情報も知らずにこの映画を見たら、スミス氏をジョニー・デップが演じていると、僕は気づかなかったかもしれない。
メイクの効果もあるかもしれないが、良い意味で「ジョニー・デップが演じている」と思わせない、役への溶け込みぶりである。
まわりを固める日本人俳優たちの演技も素晴らしいと思う。
熊本弁に関しては、僕は熊本の人間ではないので、もしかして現地の人が聞いたら、違和感のある訛りで演じてしまっているのかもしれないが。
個人的には、少ししか出てこないが、浅野忠信さんの演技が素晴らしいと思った(本当にほんの少しなので、この映画を見た人が、もしもこのブログでの僕の感想を見たら、「え?そこ?」と言うかもしれないが・・・)。
映画としては、取り扱っている内容が内容だけに、ひたすらに重い。
映画館を出てからも、家に着くまでずっと憂鬱な気分だった。
ただ、見方を変えると、これくらい憂鬱な気分にさせるという事は、この水俣病という、世界史上において語り継がれるべき悲惨な人災を、
オブラートに包んだような表現を排してストレートに伝える事に成功している証でもある、と僕は考える。
この映画を見ていると、被害者ならびにその家族、遺族の方々が本当に不憫でならないが、
一方でチッソという会社がある事で、町に一定の雇用が生まれ、会社の存在があるからこそ生活ができている人達もいる、という事実も見て取れてしまう(会社を擁護する意図は決してありません。毒物と知りながら、汚染水を海に流していた事は許されない事です)。
日本においては、今の原発の問題もそうだが、このようなジレンマを抱えた問題を考え始めると、言葉が出てこなくなるというか・・・
一体いつになったら「きれいな世界」が訪れるのかな・・・と半ば諦め気味に思ってしまう。
映画というものは娯楽であると同時に、
社会にはびこる様々な問題を提起する手段としても、非常に有効に機能する表現媒体だと僕は考えているが、
この映画は世界のなるべく多くの人に見てもらいたいと思った。
とても意義のある作品だと思うし、扱うのに勇気のいる題材だと思ったので、製作陣に敬意を表したい。
僕の評価は100点満点で83点。
もしかすると、これだけ言っておいて意外に辛口だな、と思われたかもしれないが、どうしても気になったところがあって、
それは家屋のかたちと、途中出てくる地元の幼い女の子たち。
まあ映画の世界では普通にあるあるなのだが、撮影場所の一部が、実際の日本のロケ地ではなく、外国のようで、
頑張って努力して「日本」であるように見せてはいるものの、
家の石壁の作りが「え?こんな壁の家屋は、この年代の日本の地方都市には無いでしょ?」と違和感を感じたり(いや、実際あったかもしれない。けど、僕の目には違和感を持って感じられた)、
地元の幼い女の子が明らかに「日本人じゃない」(これが僕的には致命的だった)。
家の壁はまだしも、女の子に関しては、外国人が見たらどう思うんだろう?
「ハーフでしょ」で終わるのかな?
ちょっと失礼な言い回しかもしれないが、50年前の熊本の郊外の都市(というか、ほぼ村)でハーフの子がいる確率・・・いや、いても不思議な事ではないのかもしれないけど、
それにしても、そこであえて「日本人の目から見て、日本人には見えない子役を使う?」という違和感を感じてしまった。
監督は「この子達は、ぎり日本人に見える」と思って起用したのか、
「いや、実際にハーフの子が住んでいたので事実です」なのか、そこがちょっとわからない。
当時、スミス氏が水俣で絡んだ人々の中に、本当にハーフというか、日本在住の外国人の子がいたなら、僕の言っている事は見当外れなので、もしそこが判明すれば、すぐにこの意見を引っ込めようとは思っているが。
あと、これは少し勇気のいる意見というか、言うのに若干気が引ける自分がいるのだが、
見ていて少し集中力が途切れかける瞬間があったかな、と。
これに関しては、この作品が非常にシリアスかつ、史実に基づいている内容という事なので、
「上映時間中、客をスクリーンに引きつけさせ続ける演出面でのテクニック」について、
あまり語るべきでは無いのかな?とも思うのだが、
もう少しいくつかのシーンを削って、テンポ面で飽きさせないような作りになっていたらなあ、と思ってしまった自分がいる。
と、最後にちょっとだけ苦言を呈してしまったが、とても素晴らしい作品です。
少しでも興味を持たれた方には、是非見てほしいです。
というわけで、今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。