シンゴさん日記

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

(核心部のネタバレはなし)「マジカル・ガール」 白血病の娘と、娘の願いを叶えてあげたい父親の、全く心が暖まらない話。

 

昨日は自宅で「マジカル・ガール」を鑑賞。

 

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2014年のスペイン映画。

 

12歳の少女アリシア白血病を患っており、余命いくばくもない状態だった。

 

彼女の夢は、

日本のアニメのキャラクター「魔法少女ユキコ」(映画用の架空のタイトル)のコスチュームを着て踊ること。

そして、13歳になること。

 

自らの死期を悟った彼女の、

そんなささやかな願いが書かれたノートを見てしまったアリシアの父親ルイスは、

元教師で、現在は失業中。

 

魔法少女ユキコのドレスは、

デザイナーが仕立てた一点もので、

値段は、日本円で90万円。

 

無職のルイスには到底払えない金額だ。

 

アリシアの、おそらく人生最後になるであろう願い事を叶えてあげたいと、

金策を練るルイスだったが、

全くもって当てはなく、

遂には宝石店のショーウィンドウに飾られている商品を強盗しようと、

石を持ってガラスを割ろうとする。

 

そして石をガラスに投げつけようとした、

まさにその瞬間、

ルイスの身に「あるもの」が降りかかり、

物語は大きく動き出す・・・・という、あらすじ。

 

冒頭、バルバラという女性(この時は小学生か中学生の感じ)と、

ダミアンという数学教師の対面のやりとりから物語が始まり、

数分に及ぶやりとりが終わると暗転。

 

暗転が明けると、今度は、

日本の歌手、長山洋子のアイドル時代のデビュー曲『春はSA・RA・SA・RA』(長山洋子の曲というのは、見終わって色々調べてから知った)に合わせて、

鏡の前で踊る少女アリシアが登場。

 

まず、この時点で

「な・・・なんだ?この世界観は・・・?」という、

ある種の「シュール」とも言える展開と映像に目を丸くさせられる。

 

ちなみに、これがその曲である(↓)。

 

 

このシーンを見た、

ヨーロッパ人を含めた多くの外国人は、

このアリシアの姿を見ても、

「日本のアニメ好きの女の子なんだね」といった感じで、

別段「変わったことではない」という感覚かもしれないし、

今となっては大半の日本人も、

日本のアニメが、ヨーロッパの少年少女に受け入れられているのを知っていると思うので、

特にヨーロッパ在住の日本人がこのシーンを見ても、

先と同様に「この女の子は日本のアニメが好きなんだね」という、

それ以上でも、それ以下でもない感想を持つのかもしれないが、

日本にしか住んだことがない日本人の僕の目には、

何というか、やはり、この感じは「独特」なのである。

 

僕の伝えたいニュアンスを感じてもらうには、

この映画を見てもらうのが一番手っ取り早いのだが、

この不思議な雰囲気が(これを「不思議」と言っている僕の感覚が、実はもうすでに古いのかもしれない)、

「これは、いったいどういう映画なんだ?」と、僕に大いなる興味を抱かせてくれた。

 

まさに「ツカミはOK」と言ったところ。

 

そして、その「シュールな絵面(えづら)と空気感」の最たる極みが、

クライマックスのシーンだろう(最大のネタバレになるので伏せます)。

 

今まで色んな映画で、

様々なインパクトのある名(迷)シーンを見てきたが、

この映画の最終盤の極めつけのシーンも、

数々の印象的な作品に引けを取らない、

結末の内容も含めた上で、

かなり「記憶に残るワンシーン」である。

 

物語は終始淡々と、静かに進行していき、

全くと言っていいほどBGMがないため(途中、スペイン語っぽい歌が流れるが、それ以外は、ほぼなかったと思う)、

スペインという国の生活の中に響く長山洋子の歌声が、

余計に「浮いて」聴こえる、というか、

なんせ際立つのである。 

 

しかも、「あんなシーン」で。

 

まあ気になる人は、是非見てほしい。

 

と言っても、この映画は、

全くもって万人におすすめできるものではない。

 

この映画に一貫して流れる

「暗くて、静かで、悲しい」の三要素は、

この映画を、興行的成功という事象から最も距離を置かせる対極の位置に縛りつけており、

これぞまさに「人を選ぶ映画」である、

と僕は思うのだ。

 

しかし、僕はこの映画を大いに評価したい。

 

一本道では進行しない、巧みなストーリー展開に釘付けになり、

映画全体を支配する圧倒的な「静けさ」が、

逆に劇中に表現されるエピソードを、

強烈に際立たせる。

 

物語の最後の最後になっても明かされない、

バルバラとダミアンとの間にある過去を、

見る者の想像に委ねる演出や、

オープニングシーンがデジャヴのように甦るような最終結末は、

まさにヨーロッパ映画のお手本と言った感じで、

受け取り方は人によって様々であろうが、

個人的には唸るものがあった。

 

僕の評価は、

100点満点で、85点。

 

この作品は、

ある種のマニアックな「怪作」であり、

もしかしたら「カルト映画」の部類に入るかもしれないが、

「踏み越えてはいけない一線というものは、

やはり踏み越えてはいけないのである」

という教訓を、見る者に示してくれているような気がした。

 

それにしても、これも映画を見た人にしかわからない書き方で申し訳ないが、

金持ちというのは変態だらけなんだろうな、

と思ってしまう。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

マジカル・ガール

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