8月31日、「バービー」を鑑賞。
本編の内容以外の事で、日本(とそれ以外の国でも)で色々と物議を醸した本作だが、その辺りは、本作を語る上で僕には関係のない事である。
マーゴット・ロビー演じるバービー人形が、「完璧で理想の世界」であるバービーランドから、アメリカのリアルな人間社会へ旅立ち、自身が暮らしていた世界との価値観のギャップと対峙する、という内容である。
純粋に映画自体の評価としては、
最近のハリウッド作品で、よく目にするポリティカル・コレクトネス(俗に言う「ポリコレ」。差別的な表現を排除し、中立や多様性を尊重した用語、動作などを重んじる姿勢)を「これでもか」と前面に押し出した作風であり、個人的には、その描写やメッセージ性が、自分にはけっこう「押し付けがましく」感じた。
少し自分の考えはねじ曲がっているかもしれないが、僕は、本当の意味での「多様性」という概念は、「多様性という概念をあまり好まない人々」の価値観も尊重する事であって、然らば、それを内包する事で、真の意味での「多様性」が完成するのではないか?と考えており(それは「多様性のパラドックス」と言えるかもしれない。ちなみに言うまでもないが、過激思想は尊重しなくていいと思う)、この作品で展開される「表面的多様性」を訴える(少なくとも僕の目にはそう映る)かのような手法には、どうにも違和感を感じてしまうのである。
いわゆる「リベラル」な人たちに支持される事を目論んだ・・・、と言うより「リベラルの価値観こそが正義」と言わんばかりの、強めのメッセージを感じる・・・と言っては言い過ぎだろうか?(まあ、映画の中で言ってる事自体は、前時代的な価値観に比べて、全然正しいんだとは思うが)。
まあ、それはさておいて、基本的に本作は「コメディ」と分類されるであろうが、もしも、日本にしか住んだ事がない日本人が、この映画が訴えるメッセージやジョークを、「全て理解できた」と主張した上で絶賛しているとしたら、僕は「お前、それホンマか?」と、その人に対して、ある種の胡散臭さを感じるくらい、「アメリカで生まれ育った人じゃないと、芯から伝わらない」ジョークや皮肉、メッセージがあると思うので、
日本にしか住んだ事がない日本人の僕としては、どうしても「なるほど。これがアメリカってやつか」と、分析的に鑑賞してしまい、幾分この作品の基底となる「楽しさ」に浸り込めない部分があった。
総合的には、良くも悪くも「この時代のアメリカで生まれるべくして生まれた映画」に感じた。
100点満点で、50点。