9月5日、自宅で「ベルファスト」を鑑賞。
2022年公開。
製作国はイギリス、アイルランド。
この作品の監督・脚本・製作を務めるケネス・ブラナーの少年時代をモチーフにした自伝的作品。
(↓ケネス・ブラナー)
ケネス・ブラナーと言えば、
最近ではクリストファー・ノーラン監督の
「TENET テネット」において、
悪役の大富豪、セイターを演じていたが、
(↑はっきり言って、この映画はようわからんかった)
個人的に、この方については、
1998年に日本でも公開された「ハムレット」の印象が強い。
日本での公開当時、僕は21歳で、
この「ハムレット」を、
梅田の三番街シネマ(今はもうない)で見たのだが、
上映時間が4時間(!)もあるにも関わらず、
当時の自分的には、
「何一つ面白いと思わなかった」という事で(笑)、
かなり強く印象に残っている(今見たら、また違った印象を抱くかもしれないが、まあとにかく4時間は長かった)。
ちなみにこの時、僕の左隣に、
「おばあちゃん」と言える年齢の女性の方が座られていたのだが、
その方が上映開始後、たったの5分くらいで寝落ちしてしまい、
そのまま最後の30分くらいまで寝続けていたのは、
印象に残るどころか、ある意味、衝撃であった(笑)。
そのおばあちゃんは、結局最後までいたが、
映画の内容をわかっているわけがないし、
僕からしたら、一体何をしに来たのか、という感じだ(笑)。
とまあ、それはさておき、
この「ベルファスト」なのであるが・・・、
うーん、なんだろう?
良い映画っちゃあ、良い映画なのである。
1969年のアイルランドの街ベルファストに暮らすバディ少年と、
その家族との生活ぶり、
そして、当時この地域で勃発していた、
キリスト教プロテスタント派によるカトリック教徒の排斥運動などを描いていて、
オープニングの暴動シーンなどは結構な緊張感を放っているし、
のっけから、
「おっ!これはやはり、レビューサイトのそれなりの高評価どおりの面白映画か?」と、
その後の展開にかなり期待してしまったのだが、
そこからが僕には、いかんせん眠たかった。
暴動については、
最終盤の方で、もう一度クローズアップされるものの、
この作品においては、それがメインディッシュであるという位置付けではなく、
バディのクラスメートの女の子への片思いや、
家庭におけるお金の問題、
バディの父親が宗教対立について抱える問題、
バディが家族と一緒に映画を見に行った事、
バディと祖父母との会話、
暮らしにくくなってきたベルファストを離れて、家族揃って引っ越しをするかどうか・・・、
などといった様子が、
軽快で爽やかな音楽を挟み込むかたちで、
淡々と描かれていく。
こういった数十年前の古き良き(ある意味で「悪しき」とも言えるかもしれない)時代の、
社会風景を描いた映画は、
日本でいうところの
「ALWAYS 三丁目の夕日」に通じるものがあるのかもしれない。
当時のアイルランドを知る人が、
この「ベルファスト」を見ると、
恐らく「あ〜懐かしいなあ!」という感慨と共に、
きっとその国の人でしか味わえない感動があるのだろう。
だが今回、
この「ベルファスト」を見る僕は、
この時代のアイルランドの空気感を知らない日本人である。
今作を見ても、
懐かしさなどを感じることは不可能なので、
(かつて日本でも流行った「サンダーバード」の玩具が登場するが、日本人がアイルランドの家庭にあるサンダーバードグッズを見て懐かしむ、というのは、「懐かしむ」という言葉の使い方においては、ちょっと違うような気がする)
僕における頼みの綱は、今作が、
「ストーリー的に面白いか。
最後まで飽きさせずに見せてくれるか」
という、一点に集約されるのである。
しかし、この点が、
僕にとってはかなり弱かった。
なんだか、見ていても前のめりになれない、
全体的にパンチに欠ける作風であった。
今作で描かれている、
欧米の文化を感じさせるようないくつかのシーンも、
多くの日本人には、感覚的に伝わりづらいものがあるかもしれない。
例えば、
バディとバディの兄が、カトリック教会の神父の説教を聞きに行って、
神父がものすごい迫力でプロテスタントを否定する説教を披露し、
兄弟ともにビビりまくる、というシーンがある。
このシーンを見て僕は、
「ここって、もしかして欧米人が見たら、けっこう笑うところ?」
と思ったのだが(実際、欧米人が見てどう思うかはわからない。逆にプロテスタントの人もカトリックの人もちょっと怒るかもしれない。正直わからない)、
日本人で、かつキリスト教徒でもない僕には、
このシーンにおける「作り手が見る側に期待しているであろう反応」が、
間違いなくできていないと自覚している。
あとは、
バディのおじいちゃんが、おばあちゃんも交えて、
バディに恋愛の作法を伝えるシーンなども、
一般的な日本人の孫と祖父母の会話には絶対にないような、
向こうの文化ならではのユーモラスで洒落た感じの会話なのだが、
そういったものも、
「ある種の心温まるシーンである」と、
僕は頭では理解できるものの、
なんだか見ていて、いまいちピンとくるものがない・・・というか、
「この感覚は日本人にはないなあ。このべったり具合、これは欧米の夫婦やなあ」と、
このシーンも含めて、
全体的に「欧米というものを客観的に眺めている」ような感覚で見てしまい、
なんだか作品の中に入っていけなかった。
クライマックスでは再び暴動が起きるのだが、
結局、僕が身を乗り出す勢いで見たのは、
この2回の暴動シーンだけである(ちなみに、このシーンで、バディがスーパーにある商品の一つを盗むのだが、それを「なぜ盗んだの!?」と咎めた母親に対して、バディが放った言い訳がけっこう面白かったし、可愛いかった。あそこはイギリス人含めたヨーロッパ人などは、僕ら日本人より、もっと笑うシーンのような気がする・・・って知らんけど)。
批評家や、レビューサイトでも高めの評価がつけられている今作であるが、
途中で寝落ちしそうになるのを、
ストレッチなどをして、
必死で寝ないように頑張って見たほど、
残念ながら、僕には全体的に退屈であった。
なんだかケネス・ブラナー氏には申し訳ないが、
僕の評価は、100点満点で54点。
あと、ストーリー以外の演出について、
今作は、ほぼ全体通して映像が白黒なのだが、
これについても、
別に白黒である必然性を感じなかった。
「普通に、全編カラーでいいのに」と思いつつ見ていたが、
なぜか家族で見ている映画館のスクリーンや、
バディがおばあちゃんと見に行った演劇の舞台上だけは、
そこだけがカラーで表現されていたりして、
正直、その意図するものがわからなかった。
僕としては、久しぶりに肩透かしを食らった印象の作品であるが、
記事タイトルにもあるように、
「映画としての雰囲気」自体はよくて、
見る人によっては「切なくて、心温まる良作」なんだろうと思う。
けど、自分には合わなかったねえ・・・。
という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。