シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

【ネタバレあり】「夜明けのすべて」 夜空に輝く星たちのように、闇に包まれてこそ見えてくるものがある。

夜明けのすべて」を鑑賞。

100点満点で、86点。


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※ネタバレしているので、未見の方はこれ以降はご注意。

 

 


パニック障害に苦しむ男性と、
月経前症候群に苦しむ女性の物語。

僕自身は原作小説は未読。


ハラハラするような場面がいくつもあり、
中盤あたりからは、「やめてくれよ、やめてくれよ。胸糞な展開になるなよ・・・」と祈るような気持ちで見ていたが、
結果的には致命的レベルの事象は起こらず、
見終わった時には「ああ良かった」と、
ホッとした気分になった。


この作品は、ほとんどの映画によくあるような、
「後半に向かってイベントの大きさが増していき、客の興味を惹き付ける」タイプではなく、
「後半に向かってだんだん平穏になっていく」事で、客を安心させる、という方向性を持っており、その終わり方が何とも心地良い。


それは、別にハッピーエンドといった単純なものではないし、
最後に至るまで二人の病が治っているわけではないので、
ラストシーンまで辿り着いた時に、
その二人の落ち着きどころについて、「これで良かった」などと結論づける事もできないのだが、
じゃあ何が良かったのかと言うと、
結局のところ、「ある人の心が、人生に対してより広い視野を持てるようになる過程を見れたこと」が良かったのである。


主人公の二人以外にも、苦しみを抱えた人物が登場するし、
作品内でそういったフォーカスをされていない他の登場人物たちも、
きっと大なり小なりの苦しみを抱えているはずだ。


苦しみなんて、この世から一切合切無くなれば良い、と思うのが人情だが、
どうやらそんな事は夢物語に違いないので、
僕たちにできる事は、「心の器をできるだけ広げていく」しかないのだろう、恐らく。


フィクションなのに、二人の主人公を含む、この映画に登場する全ての人に対して、
「皆さん、どうかお幸せに」と、祈ってしまうような作品だった。