昨日は、なんばパークスシネマにて、
「クレッシェンド 音楽の架け橋」を鑑賞。
2019年製作のドイツ映画。
2022年現在、日本全国で公開中。
紛争で敵対するイスラエルとパレスチナの双方から、音楽家を夢見る若者を集めて結成されるオーケストラをめぐる物語である。
僕はてっきり、見る前は、
この映画は実話だと思っていたが、実際はそうではなく、
現実に存在する、アラブ系とユダヤ系の人たちの混合で構成される楽団から着想を得たフィクションということであった。
何年前だか忘れたが、
僕自身、テレビでこの混合楽団が初めてコンサートを行った、というニュースを見た記憶があり、
映画を見ている最中に、
「あれ・・・?
あのニュースで見た楽団に、こんな出来事(ここは最重要部のネタバレになるので伏せておく)あったっけ?」
と思いながら見ていたのだが、
あとで公式ページの説明などを読んでみたら、
先に書いたように「実在する楽団にインスパイアされて」製作した映画、
という事を確認し「ああ、そういう事ね」と納得した次第。
見終わっての感想は、
「悲しいなあ・・・・。だけど・・・」という感覚。
この「だけど・・・」は、
この映画の中における、あるシーンを見て、僕が一縷(いちる)の希望の光を見たような気がした時に抱いた、心の中での一言。
何かは言わないが、
もし最後まで見たら、おそらくわかっていただけるかな、とは思う。
現代の平和な日本で生まれ育った僕には、
紛争地域に住む人々の気持ちを、真の意味で理解することはほぼ不可能であるが、
この地域の人たちが、その日常において、
潜在的に常に「お互いを憎んでいる」という事実は理解できる。
敵対する者同士が、同じ音楽を奏でることで、
平和への足がかりを作ろうとするプロジェクトであるが、
やはり話はそう簡単には進まない。
このオーケストラを指揮、指導するマエストロのスポルクは、
彼らを大自然にあふれるアルプス山脈の南チロルという場所に連れ出し、合宿を行う事にする。
演奏以外の生活も共に過ごし、
お互いを理解し合うために、と企画されたものであったが、ここでも両者の対立が浮き彫りになる。
スポルクは、相互理解を促すためのワークを根気よく施し、その結果、楽団は次第に「ひとつ」になっていくのだが、
最終的には・・・・・
というところで、これ以上は物語の核心部分であるネタバレにつながるので、解説はここまでにしよう。
合宿中、スポルクが床に一本のロープを伸ばして境界線を引き、
片方にユダヤ人たちを、もう片方にパレスチナ人たちを整列させて向き合わせ、
お互いに思っている事を、5分間の間、言葉で思う存分吐き出させる、というワークを行うシーンがある。
「テロリスト」「人殺し」などという言葉が双方から飛び出し、顔を突き合わせた若者同士の憎しみの言葉の応酬が繰り広げられるのだが、
これが見ていて、映画の中の1シーンとわかりながらも本当に悲しかった。
言い合いを終えた後の若者たちは、
虚しさと悲しさ、その他全てのマイナスの感情に苛まれた感じで、疲労と共に床に座り込む。
憎しみは人から多大なるエネルギーを奪っていく事を如実に表した、印象的なシーンだった。
人間として生まれてきて、本当に「憎しみ」の感情ほど厄介なものはないと思う。
何かに対する憎しみは、相手を傷つけると同時に、自分も傷つけていくのである。
憎しみの感情から生み出されるものは、破壊しかない。
映画を見ながら、このイスラエルとパレスチナ(を含む、時代を超えた人種間、宗教間の対立)の問題は、一体いつになったら決着がつくんだろう?
今後どうなっていくんだろう?
と思ったりしたが、
そんな事は当然、僕にはわからないし、おそらくこの先も、誰にもわからないだろう。
しかし、この物語の中には、
もがき苦しみながらも、相手を憎む気持ちを捨てきれないながらも、
音楽で結束しようとする若者が確かにいる。
個人的にラストシーンは、涙なしには見れなかった。
彼らの出した「言葉を使わない答え」に、心が揺さぶられた。
僕の評価は100点満点で、90点。
とても悲しく、とても良い映画でした。
という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。