シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

【ネタバレあり】「隣人X 疑惑の彼女」 難民を中々受け入れない日本ですが、何故か宇宙人は受け入れるんですね。

「隣人X 疑惑の彼女」を鑑賞。


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(ここから先はネタバレを含みます。未鑑賞の方や、内容を知りたくない方は閲覧注意)

 

 

地球から離れた惑星Xにて紛争が発生。

紛争から逃れた惑星難民たちを、日本は受け入れる方針を表明したが、
Xから来た者は人間そっくりに擬態でき、
一見、地球人とほとんど区別がつかない。

日本のマスコミは、社会や市民の生活に大きな影響を与えるとされるX達の正体や居所を、過激な取材手段を持ってして暴こうとする・・・というあらすじなのだが、


あの・・・・、
これって大前提としておかしくないだろうか?


人とそっくりに擬態でき、日常にひっそりと紛れ、元から地球に住む者たちの不安や恐怖の対象にもなり得る宇宙人達を、
識別手段を確立せずに政府が受け入れるなんて事は、どう考えても非常識、いや「有り得ない」のではないか?


地球の各国政府は、「受け入れを無条件で容認しないと戦争を起こす」とでも、惑星Xに脅されでもしたのだろうか?


仮に受け入れるとしても、
移住に関する行政手続きは、絶対必要なわけで、
その際に「あなたたち(X)は、我々人間と姿かたちがそっくりなので、受け入れの際にはX出身である事を秘匿しないことを前提とし、然るべき書類に出自を登録していただく必要があります」となるわけである。


しかし本作では、そのような現実的要素は完全に無視し、
「誰がXで、誰がXでないのか分からない」状態で、マスコミは「X探し」に躍起になっているという設定。


いやいや、どう考えてもおかしくないですか?


日本のみならず地球の政府、根こそぎバカなの?と。


もうこの最初の段階で、
僕は、「え?何これ」となったのだが、
辛抱して見続けていると、最後の最後に、
「手首に3つの点がある」という「Xである事の証」がしっかりと身体の一部に現れていて、もう一回、「いやいや・・・、勘弁してくれよ」と。


「ちゃんと区別できる特徴あるやん。じゃあ、受け入れの段階で、『Xさん達は皆、手首に3つの点の印があります』と、
政府はメディアを通じて言うべきやし、
仮にそれを政府が隠しても、そんな分かりやすい特徴なら、マスコミが必死にならんでも、今の時代すぐ拡散するやん」と、
とにかく設定の甘々さとガバガバ具合に、辟易することしきりであった。


もう少し突っ込んだ話をすると、
彼らは「難民」なので、政府から生活のための補助金などを給付されている可能性も高く、
そうであれば、Xでないのに、Xが享受できるような優遇措置を求めて、
手首に3つの点模様をタトゥーで彫る者も現れそうで、
そういった現実に起こりそうな社会的問題や混乱などを描いていれば、
「宇宙人が移住してきたら、社会はどうなる?」という考察を、多少は真剣に一考できるコンテンツとして、
本作を評価できそうだったのに、
物語の大枠は、既視感の漂う陳腐な演出や表現手法を伴った、中途半端な恋物語


僕個人の感想としては、「いや、そういうことじゃねえんだよ感」に支配されており、
物語終盤でマスコミの取材の仕方が過激になった折には(このあたりのマスコミの描き方なども、一昔前のテレビドラマかよ、と思わせるチープな見せ方)、
疑惑の対象となった人間が、カメラの前に、住民票だか戸籍謄本、パスポートのように見える物を提示して、個人情報をバリバリにさらけ出すし(感極まって、いくら真実を訴えたくなっても、それはアホ丸出しでしょ)、
挙げ句の果てに、それを見かねた疑惑の対象の奥さんが、
これまた感極まってしまって、わざわざ娘の生い立ちに関わる秘密をゲロってしまう、
という感じで、
とにかく、「宇宙人を政府が公式に受け入れておきながら、判別する方法がイマイチ不明って何なんですかね?」という、
最初の疑問に帰結するのである。

 

何なんだろう?

 

逆説的に考えると、もしかしてこの作品は、こんなにも人々の相互不信と混乱を招く宇宙人の受け入れを容認した日本政府を皮肉っているのか?とも考えたのだが・・・、

まあないかな?それは。


見終わった後に、かなりバカバカしいものを見せられたな、という気分になったし、
作品の随所で登場する「日本語が上手くない台湾人に対して、嫌な事を言う日本人」の、
わかりやすすぎる「嫌味の言い方」も、
昔から日本の映画やドラマでよく見る感じのテンプレ臭い台詞回しで、
このあたりも見ていて「何だかな」という感じだった。


他にも言いたい箇所がけっこうあるが(髪の毛抜くシーンとか。絶対バレるっちゅうねん。あと、野村周平演じるバンドマン。バイト先で自分の彼女がシフトめちゃくちゃ入れられてる事に怒るんやったら、お前が辞めるな。お前が働いて彼女の負担を減らせ)、
ネガティブエネルギーで自分もやられそうになるので、止めておきます。

 

100点満点で、25点。

 

ちなみに原作の小説は未読なので、
僕がこの記事で述べた疑問点を補うような設定が施されているのかは、僕には不明である。

 

なので、これはあくまで映画単体の評価ということで。