シンゴさんの、ふとしたつぶやき。

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「最後の決闘裁判」 親ガチャに失敗した、などと言ってる人たちへ。

昨日は、TOHOシネマズにて「最後の決闘裁判」を鑑賞。

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ブレードランナー」、「エイリアン」、「ハンニバル」、「グラディエーター」などの作品で知られる映画界の巨匠、

リドリー・スコット監督の最新作である。

 

物語は14世紀末、百年戦争の只中にあったフランスが舞台。

 

戦地から帰ってきたジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、

自分が遠征に出かけていた間、自分の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が強姦された事を、妻本人の告白から知ることになる。

 

妻を強姦した男は、共に戦地で戦った経験もあり、ジャンにとっては「戦友であり、かつての親友」とも言えたジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)。

 

ル・グリはマルグリットと関係を持った事を認めつつも、「強引ではない」と無実を主張。

 

妻の言い分を信じ、激怒しているカルージュは国王に「決闘による裁判」を直訴し、結果それは認められることになる。

 

カルージュとル・グリの決闘の結末やいかに・・・

というストーリーなのだが、まず一言。

 

「どっちの言い分が本当か分からないから、うーん・・・もう決闘して勝った方が真実!」って、無茶苦茶である(笑)。

 

21世紀という現代に生きるほとんどの人が「いや、それとこれとは別の話やん!」と、総ツッコミを入れるのは間違いない。

 

僕も何かの本やテレビ番組などで、かつて色んな国や地域で「決闘」や「果たし合い」なるものが法律によって認められていた、という事実は何となく知っていたけれども、

実際、この映画で取り上げられた事例(これは史実であり、実際にあった話)は、

スクリーンを通して見ても、全くもって意味がわからない(笑)。

 

何でそうなるの?と。

 

しかも、無実だと主張するル・グリが勝った場合、強姦されたと主張するマルグリットは嘘をついたとして偽証罪の罪に問われ、

その結末は、全裸にされ張り付けにされて、生きたまま体に火をつけられるのだから、

たまったもんじゃない。

 

 

例えばA、B、Cという3人の小学生の子供がいて、

休憩時間にAがBの筆箱から、Bのいない間に鉛筆を1本盗んだとする。

 

授業中に鉛筆が1本無くなっていることに気がついたBは、Aが盗まれた自分の鉛筆と同じ絵柄の鉛筆を使っている事に気づき、

「Aが僕の鉛筆を盗んだと思う!」と主張。

 

Aは「違う!これは自分のもので、盗まれたとBが言ってる鉛筆とは、たまたま絵柄が一致しただけだよ!」と、Bの訴えを全否定。

 

ところが、AがBの筆箱からこっそり鉛筆を抜き取っているのを目撃してしまったCが、

「犯人はA君です!僕は盗む瞬間を見ていました!」と証言する。

 

真実は3人にしかわからない。

 

もちろん、BとCの言っている事が真実で、犯人はAに間違いないのだが、

 

何を思ったのか、Bは

「先生!A君と相撲を取らせてください!そして『勝った方が本当の事を言っている』という事にしていいですか!」と提案。

 

困った先生だが、

「(うーん・・・このままだと平行線・・・埒があかないし・・・)、

よし!わかった!相撲で決着をつけよう!

ちなみに盗まれたと言ってるBを支持しているC!

お前、もしBが負けたら、お前も連帯責任でAに『僕もウソをついてました』って謝れよ!わかったな!」

と、相撲での決着を認める・・・

みたいな事を大の大人が、スケールをでっかくして殺し合いで決めようと言うのだから、

くどいようだが、もう一度言わせてもらう。

 

あの・・・おたくら、狂ってるんですか?(笑)

 

全くもって野蛮な時代があったものだ。

 

僕らは現代に生まれた事に感謝しなければならない。

こんな事以外にも、こういう時代はどこの国でも残酷な処刑方法が普通に執り行われていただろうし、

階級社会による差別や人権蹂躙も当たり前のように行われていただろう。

もちろん選挙や一般市民の投票なんてあるわけがない。

戦争なんて、常に身近にどこかで起こっている。

全て権力者の言いなりである。

 

この映画を見ていたら、

最近、「親ガチャに失敗した」とか言っている一部の人間に対して、今の時代のこの日本という国に生まれた事をもっと感謝しろ、と言いたくなる感情が沸き起こってきた。

 

本当にこんな時代に生まれなくて良かった、とつくづく思った。

 

・・・少々映画の話から脱線してしまったので、映画の中身に話を戻そう。

 

上映時間は2時間30分超えで、はっきり言って長いが、個人的に「いつ終わるんや、これ。」と思わせる事はなかった。

 

あくまで僕の印象だが、画面の移り変わりを見ていると、もっと長くなりそうな上映時間を、要所要所、ストーリーを理解するのに必要な部分をテンポ良く見せる編集にしようと努めている姿勢が伝わってきたし、

実際、冗長で無駄と思われるシーンもほぼないと個人的には思う。

 

同監督の中世のヨーロッパを舞台にした作品として、「グラディエーター」がどうしても思い浮かぶのだが、

こちらの「最後の決闘裁判」は、「グラディエーター」のような、奴隷が勝ち上がる、といったカタルシスを感じさせる話でもなく、どちらかと言うと、最終的に「救いのない」話なので、一般大衆受けするようなものではないだろう。

 

PG12指定という事もあって、残酷なシーンはもちろんのこと、性描写もダイレクトなので、親子一緒に鑑賞するのはおすすめしない。

 

そして最後の決闘シーンについてだが、緊張感がすごい。

 

ネタバレになるので詳しく言わないが、僕はこの決闘シーンを「祈るような」気持ちで見ていた。

良識ある人間なら、あの最後の決闘においてどちらを応援するかは明白だろう。

 

しかし、どちらが勝ったとしても、そこに「栄光」など無く、ただただ虚無感だけが残る。

勝った側の人間が浮かべていた表情がその全てを物語っていた。

 

細かい事を言うと、フランスの話なのに全編英語で交わされる会話が、やはり引っかかってしまう。

 

この映画に限った事ではないのだが(去年見た「ジョジョ・ラビット」もドイツ国内の話なのに全編英語)、これはまあ仕方ないのかな。

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(ちなみに「ジョジョ・ラビット」は傑作だと思うので、どさくさに紛れてプロモーションしておきます。)

英語が第一言語の役者たちが演じるハリウッド作品なので、こういう点に関しては目をつぶらないといけないかな・・・?

僕がこだわりすぎなのかな?

 

何はともあれ、見応えのある作品だった。

 

僕の評価は100点満点で、90点。

 

最後に、負けた側の方を見て思った。

 

「役者って、大変やな。ようやるわ」と。

 

というわけで、今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。