シンゴさん日記

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台」(ネタバレはないが、ヒントになるような記述はあり) 「ケガの功名」という諺があるが、それを体現するにもほどがある。

 

今回取り上げた作品は、

最後に大きな展開が待っています。

極力ネタバレを避けるよう意識しましたが、

少々ヒントになりうるような記述(記事のサブタイトルがすでにそれ)がございますので、

作品未見の方はご注意下さい。

 

8月1日、なんばパークスシネマにて、

「アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台」を鑑賞。

 

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2020年フランス製作。

日本公開は2022年。

 

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刑務所に服役する囚人たちに、

演技を教えにきた講師エチエンヌ。

 

彼は、指導する囚人たちの演目として、

サミュエル・ベケット作の不条理劇「ゴドーを待ちながら」を選ぶ。

 

始めは、演じることに乗り気でなかったり、

ふざけて真剣に取り組もうとしなかった囚人達だったが、

粘り強く指導を続けるエチエンヌの情熱が伝わったのか、

次第に稽古に打ち込むようになる。

 

そして、ついに彼らは「囚人のみで演じられる演劇」を、

一般観客の前で披露することになり、

大きな喜びを得ることになるのだが、

その先に待っていたものは・・・

という、あらすじ。

 

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上の画像にもあるように、

「圧巻のラストに、あなたは言葉を失う!」と大きく打って出た、この作品。

 

実話を元にした物語なのだが、

僕としては、最後まで見た時、

「言葉を失う」状態までには至らなかったものの、

「はあ〜、何とまあ、人生というのは分からんもんやな〜」と、

その展開に、何とも言えない気持ちになった。

 

もしも鑑賞前、

「最後、予想だにしない展開が!」

という前知識が、

僕の頭に一切入っていなければ、

ラストのオチには、かなりビックリしたと思う。

 

この作品には、

「え・・・?なんとなく、そういう気はしてたけど、マジかよ?」の後に、

さらに「そうきたか」が来て、

最後に「はああ、最終的にそんな事に?」という、

3段階のオチが待っている、

と僕は捉えている。

 

「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、

この物語の結末は、

囚人たちが演じた戯曲「ゴドーを待ちながら」の内容のエッセンスが、

現実世界に漏れ出したかのようであり、

その後に訪れる展開は、

まさに「人生の妙なるもの」を体現した、

ある種の「奇跡」と言えるかもしれない。

 

なお、戯曲「ゴドーを待ちながら」の内容については、ここでは割愛させていただくが、

興味のある人は、下のリンクをタップしていただけたらと思う。

(「ゴドーを待ちながら」の解説はこちら↓Wikipediaより)

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%92%E5%BE%85%E3%81%A1%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89

 

今回の鑑賞は、

「最後に何かあるぞ」という事はわかった上で見ていたので、

ラストの第1段階目のオチは、なんとなく予想できた。

 

途中から「あー、もしかしてこれは・・・」と、見ている人の多くが、

なんとなく予想がつくような「におい」がしてくるのである。

 

で、「やっぱりな」という結果なのだが、

第2段階と、第3段階のオチは、

ちょっと予想がつかなかった。

 

ものすごく勘のいい人なら、

第2段階目のオチまでは、予想できた人もいるかもしれないが、

第3段階目(これは、第2段階までの出来事が、その後どのようになったか?という顛末である)に関しては、

予想できた人など、

殆どいないのではないだろうか?

 

では、このラスト。

 

「それは、感動するようなものなのか?」

と言われたら、

これについては、僕は感動するような類のものではないと思う。

 

むしろ、何とも言えない、どことなくモヤモヤしたものを感じた次第である。

 

今回は、完全にネタバレになるような書き方はしたくないので、

このモヤモヤを詳細に述べることができないが、

あえて、ひと言で表現すると、

第1段階目のオチに対しては、

何というか「がっかりした気持ち」が拭えないし、

第2段階目のオチに対する、

劇場内のお客さんの反応も、

正直なところ、

「あそこまでの反応になるほどの事なのかな?」という感じだ。

 

第2段階目のオチのシーンに関しては、

これが現実世界で実際に起こった現場では(もう一度言うが、これは実話を元にした映画である)、

本当にお客さんの反応は、あんな感じだったのかもしれないので、

何とも言えない部分があるのだが・・・。

 

今回は、ネタバレを避けようとしつつも、

割とヒントになるような雰囲気の事を書いてしまっていて、

作品未見の方には、少々申し訳ないのだが、

僕の感覚で、はっきりと断言できるのは、

このオチには「爽快感はない」という事である。

 

今作に対する僕の評価は、

100点満点で、79点。

 

「ピンチは、チャンス」といった言葉があるが、

これほどまで見事に、

ピンチをチャンスに変えてしまった逸話も、

そうそうないかもしれない。

 

追い込まれた人間の魂から絞り出された「表現」は、

その内容はどうあれ、

それを見た者の心に、確実に何かを残すのだろう。

 

人生とは不条理であるが、

その不条理から光を取り出すのも、

人間という生き物の不思議さなのである。

 

人生は、本当に何が起こるかわからない。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。