先日、中田敦彦さんの「YouTube大学」でヴィクトル・ユーゴーの最高傑作といわれる「レ・ミゼラブル」が取り上げられていた。
恥ずかしながら僕は、世界の文学史に燦然と輝き、今後も人類が存続する限り永久に読まれ、語り継がれるであろうこの不朽の名作を今まで一度も読んだ事がない。
中田さんの絶妙な語りで解説される「レ・ミゼラブル」という物語の素晴らしさに感銘を受け、
これを機に、まずは未見であった2012年公開の
「映画版 レ・ミゼラブル」を見てみることにした。
ストーリーについては、今さら僕ごときがどうこう語るものではない。
文句のつけようがない、まさに傑作中の傑作。
この映画は映像、俳優の演技力、物語が進むテンポの良さなど、テクニカルな面においては、もう100点満点と言っても過言ではない圧巻の素晴らしさ・・・と僕は感じたのだが、
これは僕の「フェイバリットムービー」には
ならない。
なぜか。
歌っているからである。
そう、僕は「ミュージカル映画」が苦手なのだ。
今までの人生で、舞台で演じられるタイプのいわゆる本当の意味での「ミュージカル」も一度も見たことはないので(多分、今後も自分の意思でミュージカルを観に行くことはないだろう。)、
ミュージカルそのものが苦手かどうかは自分でもわからないが、確実に自覚している事は
「ミュージカル映画」は苦手、という事である。
この文脈で使っている「苦手」は「食わず嫌い」という意味も含んでいるので、
食ってみたら意外と楽しんで見れた、という作品もあるにはある。
最近のもので言うと「グレイテスト・ショーマン」。
もうちょっと遡ると「ドリームガールズ」とか。
特に「ドリームガールズ」は、確か登場人物の心の中を歌で表現するような手法だったと思うので(ちょっと記憶がおぼろげ。間違ってたらごめんなさい。)、自分としては
「うん、そういう歌の使い方なら、まあいいだろう」と納得したような気がする(もうだいぶ前なのでイマイチ覚えてないが)。
で、この「レ・ミゼラブル」だが、普通に台詞を喋る部分は、あるにはあるがほとんどない、と言っていいレベルで無く、
ほぼ最初から最後まで「歌いっぱなし」という、僕のような「ミュージカル映画アレルギー」が最も恐れるタイプの映画なのだ。
なので、先ほども言ったようにテクニカル面での圧倒的完成度には、ぐうの音も出ないのだが、
僕に深く刻まれたミュージカルという娯楽に対する免疫反応がところどころに働いてしまった。
特にエポニーヌという女性が銃で撃たれて死ぬ間際のシーンでは、死にかけなのに歌い始めることに
「まだ歌えるんかい!」とツッコんでしまったし、
ガブローシュという子供が撃たれて死ぬシーンでも、
子供を撃ってしまった事に動揺している兵士が歌い出して、
「そんなに動揺しててもやっぱり歌うんかい!」とツッコんでしまった。
けど、そんな僕もわかっているのである。
この映画において「ツッコむ」ことにそんなに意味がない事を。
どういう事かと言うと、
ミュージカルが好き、あるいはミュージカルという娯楽に抵抗がない人なら「ミュージカルはそういうもの。ミュージカルは突然歌い出すから良いんだ。」という定理が前提としてあると思うので、
僕のような「ツッコミ人種」が、
ミュージカル文化のテリトリーに入っていって、つべこべ語るのはミュージカル側の人にとっては、
全くもって蚊の羽音レベルにめんどくさい雑音なのかもしれないし、
ミュージカルに対するこの種のツッコミは、ミュージカル界隈にとっては、
「はいはい、また例のアレね」という程度でいなされる、取るに足らない野次なのだろう。
なので、僕がこの映画を「歌っている」事に焦点を当てて評価してしまうと、おそらくそれは見当違いになってしまうのだと思う。
完成度は間違いなく凄い。
この映画を見ていると本当に「これはプロの仕事」だと思う。
となると、もうこれは単純に「好き」か「嫌い」かの話になってくる。
どちらかはっきり言え!と迫られたら、こう言います。
・・・嫌いです(笑)。
やっぱりミュージカル映画は苦手。
やっぱり僕は本能的に「うわあ、これ普通の台詞回しの映画として見たかったなあ。」と、劇中何度も思ってしまった。
何度も言うが、物語そのものの圧倒的面白さと、
映画としてのテクニカル的側面では圧倒されたので、最後まで退屈はしなかった。
ただ一度も泣かなかったし、心が打ち震えるレベルまではいかなかった。
なぜかと言うと、歌ってしまうので。
もしも全編通して歌わなかったら(もう、この言い方が、ミュージカル好きの人にとったらすっごく気分を害するかもしれませんし、先ほども言ったように不毛な言い方である事も重々承知しています。ごめんなさい。けどあえて「歌わなかったら」というフレーズを使わさせてください。)、
ラストシーンなんて間違いなく号泣していた。
しかし、全編を通して「最上級の感心」はあった。
ということで結論と総評。
ミュージカル映画としての完成度は100点満点で99点(お前が言うな、という声が聞こえてきそう)。
けど僕自身「好きになりきれない」ので、マイナス20点で79点。
この映画は前の職場の同僚が「鳥肌が立つほど感動した」と言っていたのだが、今回実際に見てみたことで、それについてはめちゃくちゃわかる気がした。
歌っていることに抵抗がなく、スッと入っていける人なら絶対に凄い作品であることに間違いはない。
これは良い悪いの問題ではなく、見る個々人にとって合うか合わないかの話だ。
僕にはやっぱり合わなかった。
最後にミュージカル映画について、もう一言。
これは松本人志さんもかつて同じような事を言っていたのだけれど、
そんな僕でも、インド映画は「いいぞ、どんどん歌え(踊れ)」と思ってしまうんだよなあ・・・。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。