※今回は「ウィキッド ふたりの魔女」にネタバレがあります。
未見の方はご注意ください。
まずは「35年目のラブレター」(ネタバレなし)。
100点満点で、93点。

「こんなん、泣くしかないわ」としか言いようがない、めちゃくちゃ良い話。
映画化するにあたってのデフォルメもあるのだろうが、
実話ベースの物語では、久しぶりに、強烈に心を鷲掴みにされた。
不遇な少年時代を過ごしたおかげで、
話すことはできても、読み書きをほとんどできないまま大人になってしまった男性が、
定年を迎えるにあたって一念発起し、
お世話になってきた愛する妻に、自筆でラブレターを書くという目標を掲げ、
夜間中学に通い始める。
現在、日本人の識字率は、ほぼ100%と言われ、
GHQにより、1948年に行われた唯一の識字率調査でも、
文字の読み書きができない日本人は総人口の約1.7%だったという。
この「文字の読み書きができて当たり前」の国の中において、
それができないという事は、
不利という言葉だけでは言い表せないほどの生活上の困難と、精神的苦痛を味わう事が容易に想像できる。
これを見た人の中には、
「でも話せるんなら、テレビとか見てる時に字幕を追っていたら自然に覚えそうなものだし、
普通に読み書きできる奥さんがいるなら、ちょっとずつ教えてもらえるんじゃないの?」と思う人もいるかもしれないが、
いやいや、子供の頃ならまだしも、大人になってからは、
そんな簡単な話では無いと僕は思うのだ。
幼少期に受けたトラウマや、劣等感から生じる「自分には読み書きができない」というマインドセットに加え、
読み書きができなくても、寿司職人という職業をやっていく分にはそこまで支障がなく、
文字が絡む事は、読み書きができる奥さんがサポートをしてくれる、
といった諸々の要素があると、
一応それで生活は成り立ってしまい、
やはりその日々が普通になってしまうと、
「文字の読み書きができるようになってやる」とは、
何かしらの決意が生じない限りは、中々思わないだろう。
主人公の西畑保は、
「自分に読み書きができる可能性は、もうない」というマインドセットに強烈に囚われていたので、
これが最大の障壁となっていたと考えられる。
今作を見ていて、
この「マインドセット」というものは、人生を左右する本当に重要な要素だと痛感した。
人は、「まだできない」と思っていることは、いずれできる可能性があるが、
「できない」と信じてしまった事は、その思い込みを外さない限り決してできないし、
何よりもまず「やろうとしない」のである。
半信半疑でも、
何かについて、「もしかしたらできるかも。失敗するかもしれないけど、やるだけやってみよう」と少しでも思ったなら、
挑戦するべきだと思った。
今作を通じ、主人公のモデルとなった西畑さんに対して、本当に頭の下がる思いがしたし、
48歳という年齢で、英語、中国語、韓国語といった外国語学習に取り組む自分にとっては、
非常に勇気づけられる内容の映画であった。
まあ、ちょっとだけツッコませてもらうとしたら、
鶴瓶師匠の若い頃を、重岡大毅君が演じているのだが、これはちょっと男前が過ぎるかな?と。
僕の中で師匠の若い頃は、コレなので(笑)↓
続いて、「ウィキッド ふたりの魔女」。
100点満点で、63点(ネタバレあり)。
20年以上に渡って人気を誇るブロードウェイミュージカルの映画化。
基本的にミュージカル系映画はどれも、
演技や音楽、ダンスの質そのものは非常に高いものばかりであり、
演者を含めた製作陣の「プロフェッショナルぶり」を堪能できる、という意味においても付加価値の高いジャンルだと、僕は思っている。
冷静に考えると、「なぜ歌う?なぜ踊る?」というツッコみが生じるのだが、
その歌とダンスの質があまりにも高いと、
その技量そのものに驚かされる事になるので、
僕はミュージカル自体は嫌いではない(ただ、「レ・ミゼラブル」はミュージカルスタイルでは見たくなかった。あれは普通の会話劇で見たかった)。
で、今作については、63点という超絶微妙な点数をつけてしまったのだが、
理由は2つで、
1つは、上映時間が長いせいか(2時間40分くらい)、けっこう中だるみを感じたのと、
もう1つは、中だるみを感じた原因の1つとして、
歌はまだしも、ダンスパートにあまり面白みを感じる箇所が少ないという事。
ちょっとあんまりこれを言うと、インド映画至上主義みたいになってしまうのだが、
やはりインド映画で繰り広げられる、ダンスのシンクロぶりと、
あの何とも言えない独特の世界観というか、「味」を一度でも見てしまうと、
こういった西洋の歌と踊りは、
なんだかスタイリッシュすぎて、どことなく面白味に欠けるというか(いや、十分凄い事をやっているのだが)、
しっとりとしたスローパートなんて、
ちょっと眠気を誘うような類のものに僕の目には映ってしまって、
「もうちょいド派手なもん、見せてくれねえかな?」なんて不埒な思いに駆られてしまったのである(でも、図書室だったか、食堂だったかの何かの場所で、グルグル回る円筒の中で踊り歌うパートは、けっこう凄いと思った)。
クライマックスで、
猿の兵隊たちに羽が生えてからはけっこう興奮するものがあって、
そのあたりは楽しませてもらったのだが(「おい、もうそこはいちいち歌わずに、はよ逃げた方が良いんちゃう?」とツッコんでしまう箇所はあった笑)、
まあやっぱりちょっと・・・、そこに行くまでが少し長かったかなあ。
とりあえず、パート2も見に行くつもりではある。
あと、作品の評価と関係ないが、アリアナ・グランデが、
以前に比べるとけっこう痩せてて、
「大丈夫か?」と、一瞬不安を覚えてしまった。
日本語を一生懸命学習するほどの親日家で、
彼女に親近感と好感を抱いている自分としては、
いつまでも健康でいてもらいたい。
というわけで、映画レビューでした。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。