※今回は、「正体」と「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」に大きなネタバレを含みます。
未見の方はご注意。
まずは、「動物界」。
100点満点で、69点。
人間が動物の姿に変異していく、という謎の奇病を描きつつ、
現代における人間社会の問題点についても触れる社会派SF作品。
「人間が動物になってしまう病気」というと、
主人公が芋虫になってしまうフランツ・カフカの「変身」が思い浮かびそうだが、
こちらの方は、鳥やオオカミ、カメレオンやタコなど、
動物の種類もバラエティに富んでいる。
僕の知る限り、ありそうでなかったタイプの面白いアイデアの映画だし、
「常に異物を排除しようとする」人間社会の冷酷さを浮き彫りにした点も評価できるが、
脚本と演出面において、もう一捻り欲しかったな、といったところ。
テンポ感ももう少し軽快であれば良かったように思える。
途中、ちょっと眠たくなってしまった。
ラストは悲しいものではあるが、
一筋の希望を感じさせるところもあり、中々良かった。
最後のお父さんの思いに、こちらも思わず泣きそうになった。
続いて、「正体」。
100点満点で、75点(※ネタバレあり)。
殺人の罪を着せられた青年が、
自分の無実を証明するため刑務所から脱走し、
真実を明らかにしようする物語。
面白いか面白くないかで問われると、
「面白い」と言える作品であったが、
要所要所のツッコミどころが引っ掛かり、
自分としては75点、という惜しい点数となった。
まず冒頭、
「いや無理だろ」となる。
あの状況、1人で3人を相手にして逃げおおせるなんて、
ほぼ不可能に近いと思われるのだが・・・。
でも逃げてしまわないとそこで映画が終わるので、
何故か居合わせた警官も銃を抜かず、
結果的に逃げれてしまうんだな、これが(笑)。
次は物語中盤で、
完全に警察の行動を妨害しているので、あれはれっきとした犯罪なのだが、
そのあたりについて、吉岡里帆はその後何も問われず物語が進行していく。
まあ、それ(吉岡里帆の警察への妨害)を追求しだすと、
物語が本筋とは関係のないところに流れていってしまうので、
いちいちそんな事をあげつらっている僕の方がおかしい、と言われればそれまでなのだが。
で、その吉岡里帆が庇ってくれたおかげで、
横浜流星は、匿われていたマンションから脱出し、近くの川に飛び込んで、
警察の追手から逃げきることに成功するのだが、
いやいや、それも無理だってば(笑)。
現実問題、応援に呼ばれた警察がすぐ近くにいるはずなんだから、
川に飛び込んだ時点で移動速度は格段に落ちるし(服を着たまま泳ぐことになるから尚更)、
逃げる方向と位置を確認しやすいので、もう逃げ切れないって。
そして終盤、
横浜流星は、被害者の遺族が入居している介護施設に偽名で就職を果たすのだが、
ここに至っては、もはや変装も超薄めになっていて(つうか、ほぼ変装してない。メガネ掛けてるだけ)、
ぱっと見で、「あ・・・!この顔はもしかして脱走中の死刑囚?!」と気づかれるレベル(後々、案の定バレる)。
同僚、入居者、なぜ誰も気づかない?(笑)。
クライマックスで横浜流星が特殊部隊に包丁を持って襲いかかるのも、
「こんな事しちゃったら、たとえ殺人は無実となっても、別件で逮捕されてまた刑務所やんけ」
と突っ込まざるを得ない。
という感じで、
「なんだかなあ」な場面が多くあるものの、
ストーリーとしては面白かったので、まあ良いんじゃね?という評価。
あと、映画のストーリーとは関係ないが、
横浜流星の顔面、イケメンすぎ。
生まれ変わったらこういう顔になりたい(笑)。
続いて、
「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」。
100点満点で、90点(※ネタバレあり)
「カメラを止めるな!」の大ヒットで名を馳せた上田慎一郎監督の作品。
最近NETFLIXで大ヒットした「地面師たち」を思わせるような展開で、
あれにインスパイアされたのかな?と一瞬思ってしまったが、
後で調べてみたら、この物語は「地面師たち」が配信されるより遥か前の2016年に発表された韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師♡ 38師機動隊」という作品が原作になっているとのこと。
はっきり言って、これは面白かった。
観客の自分も、最終的に詐欺師たちの筋書きにヤラれた!となり、
この脚本には唸った。
「なんか『地面師たち』みたいだなあ」と思いつつも、
面白いので、特にその辺については問題なし(笑)。
冷静に考えると詐欺師たちの企てが、
無理というかリスクがありすぎて(ビリヤードの場面や、お金のすり替えの方法など)、
先ほどの「正体」を超えて、
ある意味「もはやツッコミどころしかない」とも言えるのだが、
これに関しては、もうこっちは完全にこの作品を優れたフィクションとして咀嚼してしまっているので、
まあ個人的に問題なし。
「毒をもって毒を制す」という諺があるが、
「正義の鉄槌を下すには、悪の手法を取らざるを得ない時もあるのだ!」と、
見終わってから一人で興奮している自分がいた(笑)。
というわけで、今回の映画レビューはここまで。
ではまた。