「密輸 1970」を鑑賞。
100点満点で、84点。
※今回の記事はネタバレを含みます。
未見の方はご注意ください。
韓国で実際にあった事件をヒントに構成されたフィクションらしく、
海に素潜りして貝や魚を獲る、いわゆる「海女さん」が、
困窮した生活から抜け出すために、
密輸ブローカーによって、隠蔽工作としてひとまず海に沈められた密輸品の引き上げ作業に加担する、という物語。
今作は、公開前に予告編が流されていた時から個人的に気になっていた作品で、
これを書いている7月17日時点での「映画.com」での平均評価は、3.6点と、
そこまで高いとは言えない作品ではあるのだが、
僕としては、これが中々に楽しめた一本であった。
メロディアスな韓国の懐メロソングがバックに流れる味のあるオープニングからしばらくしての、
税関による摘発シーンにおける、
残酷かつ衝撃的なハプニングでまず心を鷲掴みにされるものがあったし、
その後の、犯罪に手を染める者たちの心理戦というか騙し合い合戦も、
話の流れを把握するのが少々大変で、少しでも油断してボーっと見てしまうと、
頭の中がこんがらがってしまいそうな複雑さはあるものの、
それはそれで見応えがあったし、
冒頭のみならず、劇中で随所に流れる韓国の懐メロ歌謡の数々は(これが実際に韓国でヒットした曲なのかどうか、映画用に作曲されたそれ風の曲なのかは僕には分からない)、
この映画の持つ独特の色合いを際立たせるのに、
非常に効果的な役割を果てしていると感じた。
総合的に見て、脚本も演出もとても良く練られた作品だとは思ったが、
ただ、クライマックスにおける素潜りのシーンなどでは、
「海女さんたち、いくらなんでも水中での息止め時間が長すぎやしないか?」と、
ツッコんでしまったところも少々あるし、
「人間、金が欲しいとは言え、ここまで残忍かつ残酷になれるものかな?」といった具合に、
僕としては、人の心理という要素において、
ちょっとした違和感を感じる部分もあった。
まあそれでも、総じて完成度は高い作品であると思ったし、
こちらの予想というか、読みを裏切る展開の連続で、
見応えは十分と言える作品であったのは間違いない。
最終的には、一番の悪に成り下がっていた人物が、
因果応報的な悲惨な末路を辿る事になるのだが、
この騙し合いの戦いに勝利した側も、別に正義側の人でもなんでもなく、
言うなれば「犯罪者」なので、
あのようなラストシーンを見ても、自分的にはどことなく心が晴れないものがあるというか、
あまりスカッとした気持ちにはなれなかった。
まあ、このようなエンタメ作品で、
「勉強になった」という表現を使うのは、いささかオーバーなのかもしれないが、
やはり「悪銭身につかず」というか、
「金に執着しすぎるとロクな事がない」といった事を思い知らせてくれるような一本なのであった。