8月30日、自宅で「さがす」を鑑賞。
2022年公開。
製作国は日本。
連続殺人犯の数奇な関係を描いた作品。
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かつて大阪の西成区で卓球場を経営していたが、
現在は日雇い労働者として働く男、
原田智(はらださとし)は、
女子中学生の娘、楓(かえで)と2人暮らし。
ある日、智は楓に、
「連続殺人犯として全国指名手配中の男を目撃した」と、打ち明ける。
「この男を捕まえれば、懸賞金として300万円が手に入る」と言って、
智は、その翌日、楓をひとり家に残し、
突如失踪する。
楓は、担任の教師や、同級生の男子生徒に協力してもらい、
ビラを配るなどして、
行方のわからなくなった智を探し始めるが、
一向に見つからない。
そして楓は、日雇い労働の派遣先に行けば、
智と会えるのでは?と思い、
彼が働いていると思われる現場に向かったのだが、
そこにいた「原田智」は、
彼女の父親とは似ても似つかぬ、
異質な空気感を醸し出す若い男であった・・・
という、あらすじ。
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強烈な作品である。
この作品は、PG12指定という事であるが、
僕の感覚からすると、
「R18指定の方がしっくりくる」
と言えるほどの強烈な描写を備えた作品だと言える。
前半における展開を見ている限りは、
「これとこれが、どう関係あるのだろう?」
という感じで、
なかなか物語の全体像が掴めないのだが、
後半からは、その伏線が次々と回収されていき、
最終盤における「そう来たか・・・」という流れに、思わず息を呑む。
今作に登場する連続殺人犯については、
かつて、この国を震撼させた2つの事件、
神奈川県の座間市で発生した、
自殺願望のある者を自宅に誘い出し、計9人を殺した連続殺人事件と、
同じく神奈川県の相模原市で発生した、
障害者施設殺傷事件の犯人像が、
間違いなくモデルになっていると思われる。
この殺人犯を演じる俳優、
清水尋也(しみずひろや)だが、
まさに「狂気が宿った」といえる怪演を披露していて、
強烈な存在感を放っている。
(清水 尋也↓)
そして、
その彼と渡り合う、
西成で長年暮らす男、原田智を演じる佐藤二朗と、
(佐藤二朗↓)
原田の娘、楓を演じる伊東蒼の存在感が、
これまたすごい。
(伊東蒼↓)
今作のレビューについては、
ネタバレになる事をあまり言いたくないので、詳しくは述べないが、
智(佐藤二朗)に関しては、
妻に対する演技もすごいし(ちなみに妻役の人の演技もすごい)、
楓(伊東蒼)にいたっては、
全編通しての、その類まれなる演技力に、
個人的に圧倒された。
この子は天才だ。
いずれ、
日本の映画界を代表する女優になるであろう、
逸材中の逸材であると思う。
というわけで今作は、
この三人の個性のぶつかり合いと、
強烈なストーリーが、
相当なインパクトを放っており、
僕としても見応えがあった力作なのだが、
なにせ題材が題材である。
かなり凄惨であり、
一般的な感覚を持った人からすると、
眉をひそめざるを得ないような描写が頻出するので、
僕はこの作品を、万人には決しておススメできない。
正直なところ、途中で、
「うん?なんかこれって、普通にバレるんじゃない?」
というツッコミどころがあり、
そのあたりが、見終わった後も、
少し僕の心をモヤモヤさせるものがあるのだが、
それでも後半の伏線回収と、
俳優の演技が秀逸で、
とりあえず最後まで飽きる事はなかった。
ちなみに、そのツッコミどころだが、
今回は、やはりネタバレになる事は極力言いたくないので、
そのシーンを見た僕の感想だけになってしまい、
作品未見の人にはわかりづらいのだが、
でもあえて言わせてもらうとすると、
それは、
「ちょっと大阪の警察、無能すぎひん?」という事である。
特に、智の妻に対する、
「ある大きな行動」については、
どう考えても、智が警察にマークされる案件である。
「なんで、あの奥さんがこんな事をできたのか」
と冷静に考えれば、
真っ先に怪しまれるのは、夫である智だろう。
クライマックスで、
智が取った一連の行動に対する供述についても、
それまでの智のアリバイや、
スマホに残っているであろうデータを洗っていくと、
すぐにボロが出そうなのであるが、
ここでも警察の無能ぶりと、怠慢ぶりが発揮されるかたちとなって、
真相が表に出ることはなくなる。
ちょっとこのあたりは、シナリオに強引さを感じてしまったので、
僕としてはマイナスである。
あと、これはツッコミどころとしては、
ちょっとしたものだが、楓が同級生の男子生徒に、
「おっぱい見せてくれへんか?」と言われて、
渋々、胸を見せてあげるというシーンがある。
このシーンで、男子生徒が鼻血を出す、
という演出があるのだが、
あれは個人的にダメだと思った。
「いやいや、この時代に、そんな昭和のギャグ漫画みたいな・・・」となったので、
ここも少しマイナスである。
殺人犯の自慰行為のシーンも、
個人的には、要らなかったと思う。
あれは、彼が異常な人間である事を、
よりわかりやすく見せるためのものであったと思うが、
別になくても、「十分、異常なヤツ」と、
こちらは認識しているので、
あえて入れ込む必要は無かったと思う。
今作に対する僕の評価は、
100点満点で、70点。
ひとまず、グロ描写耐性のない人には、
この作品はおススメできないし、
見る人によっては、
「不快な映画」と、一蹴される可能性の高い作品であるかもしれない。
何かの間違いで、
一家団欒で見ようものなら、
お茶の間に戦慄が走ること間違いなしである。
皆さんには、くれぐれも気をつけていただきたい。
というわけで、
ここからは映画のストーリーとは直接関係ない、個人的な余談に移らせてもらうが、
僕にとっても、かなり馴染みのある風景である。
この地域や、この地域の近くに住んでいたわけではないが、
かつて職場に通うのに、
自転車で毎日、この界隈を通過していたので、
大阪ロケのシーンを見るたび、
「ああ、ここって、あそこやな」などと、
ちょっとした感慨に浸る瞬間があった。
この西成区界隈、
特に「あいりん地区」や「釜ヶ崎」と呼ばれる、
多くの日雇い労働者や、ホームレスが集まる町での僕の思い出と言えば、
27歳の頃、いつものように仕事を終え、
自転車を漕いで、
この地域にある「あいりん労働福祉センター」の前を通った時に、
このセンターの前にたむろしていた一人のオッサンが飼っていた犬に、
突如、追いかけられた事である(笑)。
(↓あいりん労働福祉センター。僕が犬に追いかけられたのは、写真の右半分あたりにある道路を走っていた時である)
僕は、犬に追いかけられる前に、
オッサンや犬に対して、何の挑発的な行動もとっておらず、
普通に自転車を漕いでいただけなのに、
何かしらのスイッチがオンになった犬(中型の雑種っぽかった)が、
「ガウガウッ!!!」と、
僕の右手側から、獣そのもの、といった吠え声を上げながら、
「追いついたら、必ずコイツを噛み殺す!!」
という勢いで飛び出してきたのである。
「あ、これはやばい・・・」
犬と言っても、ただの犬ではない。
西成のあいりん地区の犬である。
「これに噛まれたら狂犬病にかかるかもしれん!」と、何の根拠も無かったが、
そう直感的に思ってしまった僕は、
猛烈にペダルを漕いで、追いかけてくる犬から必死に逃げた。
27歳という年齢にして、
小学生か中学生時代以来の立ち漕ぎで(笑)、
最終コーナーを回った競輪選手さながらの、
命懸けのランであった。
今でも、犬が飛び出した時の、
犬の飼い主と思われるオッサンの、
「こらあ!!!行ったらあかんど!!!」
という、
おそらく犬に対してであろう怒号が、
この耳に残っている。
無事に犬を振り切って、
ダラダラと汗をかきつつ、
その安堵感からか、ヘラヘラと笑いながら自転車を漕いでいる僕の顔を見て、
道行く人は「何この人、怖いんやけど・・・」と、
僕のことを警戒したことだろう(笑)。
僕にとって、西成(あいりん地区)と言えば、この「犬に追いかけられました事件」である。
他にも、このあたりの路上では、
見た目60歳超えくらいの、
飲み屋かスナックのママらしき雰囲気のオバちゃんの両サイドに、
2人のオッサン(両方とも年齢は60か70くらい)が立って、
そのオッサン達が、
オバちゃんの右乳と左乳を、
分け合って揉みながら信号を渡っている、
という凄まじい光景を目撃した事がある(笑)。
今、話題の香川照之氏も、これには真っ青だろう。
ちなみに、
乳を揉まれているオバちゃんの表情を見ると、
明らかに感じていた、
という事もここに報告しておく。
そして、ある真冬の夜には、
上着にはMAー1を着て防寒対策に努めながら、
(↓MAー1。定番のブルゾンである)
なぜか下は、
ボディビルダーが履くようなブーメランパンツ一丁で(笑)、
髪型は「ヤクザ映画に出ていた頃の菅原文太か、薔薇族の表紙か」と言わんばかりの、
「かっちりした角刈り」という、
色んなものを超越したファッションで街を闊歩する青年を目撃したりした。
(角刈り参考画像その1↓)
(角刈り参考画像その2↓)
最近は、
近くに星野リゾートができたりして、
今後、色々と洗練されていくであろう西成のあいりん地区だが、
それによって、
この町の持つ「得体の知れない何か」
を引き寄せる吸引力が弱まっていくのは、
僕としては少し寂しい気もする。
・・・という事で、最後は、
どうでもいい余談に花が咲いてしまいましたが、
今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。