シンゴさん日記

100点満点採点で映画を評価した記事と、あと他愛もない雑談と。

「女子高生に殺されたい」(核心部のネタバレはなし) 「死にたい」んじゃなくて「殺されたい」らしいです。本当に人生色々ですね。

 

6月25日、自宅で「女子高生に殺されたい」を鑑賞。

 

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2022年の日本映画。

 

進学校に赴任してきた、

一見、真面目で爽やかな見た目の高校教師が、

実は、常人には思いもつかないような「異常な願望」を隠し持っており、

その願望を実現するために、

9年もの歳月をかけて練り上げた計画を、実行に移していく物語。

 

その教師の願望とは、

タイトルずばりそのままの

「女子高生に殺されたい」である。

 

「誰かに殺されたい、という願望を持ったり、

殺される妄想をしたりする事で性的な興奮を覚える」性癖を、

心理学用語で「オートアサシノフィリア」と言うらしい。

 

正直、僕にはさっぱりわからない。

というか、わかったら逆に怖い(笑)。

 

「ドM」という言葉があるが、

「殺されたい」とまでは思うのは、

言うなれば「マゾヒズムの究極形」である。

 

田中圭演じる主人公・東山春人は、

うつなどの精神疾患や、肉体的疾患を抱えて苦しんでいるわけではないので、

これは単なる自殺願望ではない。

 

とにかく「殺されたい」のである。

しかも「女子高生」に。

(ここまでいったら、もはや「精神疾患」に分類されないのだろうか?)

 

さらに、16歳でも18歳でもなく「17歳」が、彼にとってちょうど良いらしい。

 

厄介な人である(笑)。

これはテレビ出演させられない「激レアさん」だ。

 

そんな春人が、人生をかけて練り上げた

「殺害されるための計画」の顛末を描いたこの映画だが、

僕の感想としては、思いのほか面白かった。

 

なかなか良くできた話である(もちろん、ツッコミどころはあるので、それは後述する)。

 

テーマがテーマだけに、

賛否が分かれるだろうし、

「女子高生に殺されたい」というスタート地点で、すでに「意味がわからない」と、

嫌悪感を示す人もいるだろう。

 

主人公・東山春人がなぜ、

「女子高生に殺されたい」という願望を抱くようになったのか?

という明確な理由はわからない。

 

彼は生まれてくる時に、ヘソの緒が首に絡まり、

危うく死にかけた経験をしたらしいのだが、

それ自体は、別に理由にはならないだろう。

 

それが理由になるのなら、

同じような経験をした人の中から

「殺されたい願望」を抱く人が、ゴロゴロ現れるかもしれない。

 

「性癖」や「性的嗜好」と言うものは、

突き詰めていけば、どこかに根拠や理由があるのだろうけれど、

ほとんどの人にとっては「なんか知らんけど・・・」なのだと思う。

 

「なんか知らんけど、女の人にヒールで踏みつけられたり、ムチでしばかれると、興奮する」

 

「なんか知らんけど、異性の足の臭さに興奮する」

 

「なんか知らんけど、異性が服を脱ぐよりも、

真っ裸の状態から服を着ようとしている過程の方が興奮する」

 

「なんか知らんけど、誤ってコップなどを床に落として、粉々に砕け散ったら、興奮する(ちなみに、わざと破壊すると興奮しない)」

 

・・・などなど、

当人としては「グッとくる」のだが、

他の人からは理解されないであろう性癖は、色々とあるだろう。

 

人間という生き物は複雑である。

 

ちなみに、上記に挙げた例は、僕とは関係がない事を強調しておきたい(笑)。

聞いたことのある例を、並べたまでだ。

 

何はともあれ、

春人は、女子高生に殺されるための計画を粛々と進めていくのだが、

最終盤のクライマックスが、展開的にも、画的にも面白い。

 

なかなかインパクトのあるシーンである。

 

このクライマックスのシーンにおいて、

特に「良い演技をするなあ」と思ったのが、

やはり河井優実である。

(ちなみに、全編通して、俳優さんたちの演技はみんな良かった)

 

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前回の記事「PLAN 75」でも彼女について言及したが、

(「PLAN 75」レビューはこちら↓

https://shingosan.hateblo.jp/entry/2022/06/24/230815

 

彼女は今回、

他の人にはない直感力に優れている「あおい」という生徒を演じている。

 

あおいは幼少時から、

人とのコミュニケーションがあまりうまく取れず、

自分の気持ちを表現するのが極めて苦手な少女なのだが、

河合優実は、このあおいを演じる上で、

全編通してはもちろんのこと、

このクライマックスのシーンでも、

個人的に「お見事」と言いたい、

絶妙の「演技」を披露している。

 

彼女は、

僕が直近で見た「ちょっと思い出しただけ」、

「PLAN 75」、

そしてこの「女子高生に殺されたい」において、

それぞれ全く異なるパーソナリティを持った人物を演じ分けているが、

そのどれもが、

「どちらかというと、控えめで静かな」役柄ながら、

そのどれもに、

心の奥に秘めた切実な主張を確かに感じさせる「熱」を持っているのだ。

 

やはり、この人は只者ではない気がしてきた。

 

 

さて、話を物語に戻し、

そのインパクト高めのクライマックスシーンであるが、

確かに面白い展開ではあるものの、

ツッコミ要素はある。

 

ネタバレを避けつつ言及するのは難しいのだが、

何とかネタバレを避ける感じで言わせてもらうと、

「そんなに上の方で大声を出したら、

下の人は、みんな異変に気づくだろう?

ほんまに、すぐ下やで?

たぶん丸聞こえやで」

という事である。

 

作品未見の人には、

僕のツッコミが、何のこっちゃわからないだろうが、

見た人なら「あー、確かにそうかもしれん」と思ってくれるかもしれない。

 

まあ、こういうところが「作り物」のお話につきまとう不完全さであり、

仕方ないっちゃあ仕方ないのだが、

ここはやはり、多少の減点とさせていただこう。

 

この映画に対する僕の評価は、

100点満点で、78点。

 

もう少し突っ込んで、

「それを言ったら元も子もない」という

ツッコミをさせてもらうならば、

東山に対して、

「そんな9年も回りくどいことせずに、もうネットで、そういう人(人を殺したい女子高生)を探した方が早いんじゃないか?」

と思ってしまったのだが(笑)。

 

まあけど、彼は、

(これも作品未見の人には、わからない表現だが)

とにかく「キャサリン」を求めていたのだろう。

 

最後に、

最近、YouTubeで色々言われている(言われようとしている)田中圭だが、

やはり役者としては、

あらためて素直に「良い役者」だと思った。

 

田中さん、どうかギャンブルは控えめに(笑)。

 

という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。