(少々、ネタバレ的な記述があります)
5月21日、自宅で「先生、私の隣に座っていただけませんか?」を鑑賞。
2021年の日本映画。
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夫婦揃って漫画家の早川佐和子と、早川俊夫。
妻の佐和子は現在、売れっ子漫画家であるが、
夫の俊夫はスランプに陥り、描けない状態が続いている。
ある日、
連載の最終回を描き終えた佐和子から原稿を受け取るため、
編集担当の桜田千佳が、
早川夫妻の仕事場を訪れていた。
千佳が原稿をひと通り読み、
その出来に満足した後、早川家を去ろうとすると、佐和子は俊夫に対して、
「(千佳を)送って行ってあげたら?」と提案する。
俊夫と千佳の関係に「何かがある」ことを、
うっすらと疑っている佐和子。
二人が出て行った後、
その様子を密かに確認しようと、
佐和子が仕事場のマンションのドアを静かに開けようとした、その時、
佐和子のスマホが鳴る。
二人の後を追うのをいったん止め、
電話に出た佐和子。
佐和子の母である真由美が事故に遭った、という連絡だった。
その後、夫婦二人は、
怪我をした真由美の面倒を見るため、
真由美の家に向かい、そこでしばらく滞在することになるのだが・・・・
という、あらすじ。
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「不倫」をテーマにした、この映画。
佐和子の母・真由美が住む地域で、
運転免許を取得することを決めた佐和子が、
教習所でイケメン教官に出会い、
二人は恋に落ちていく(佐和子が逆不倫を仕掛ける、とも言えるかもしれない)のだが、
これが、ただの「仕返し」で収まらない。
不貞をはたらいた夫に対して、
精神的ダメージを受けながらも、
佐和子は極めて冷静に、そして巧妙とも言える方法で復讐を始めるのだ。
この復讐を食らった夫の俊夫は、
自分のした行いを後悔することになるのだが、
僕の目には、俊夫はある意味、「運の良い男」に見えて仕方がない。
少々、ネタバレ的な解説になるが、
佐和子の選んだ復讐方法なら、
俊夫と、俊夫の不倫相手の千佳は、
俊夫の意思さえあれば、
そのまま関係を続けられるのだし、
佐和子は、最終的に俊夫に「仕事(食いぶち)を与えてあげている」のだ。
最も信頼していた夫と、
最も信頼していた担当編集者が不倫した、
という「最悪の裏切り」に遭遇したにも関わらず、
「どうぞ、あなたたちお二人(俊夫と千佳)は、好きにしてください。
私は私で、好きな男性ができました。
夫とは離れて暮らしますが、
私は連載を続けるので、
スランプで漫画が描けなくなった夫にも、
ちゃんと私が漫画の仕事をあてがいますよ」
という佐和子は、
僕からしたら、出来過ぎにもほどがある、
肝の座った、なおかつ「愛情のある」女性である。
佐和子の復讐方法について、
「怖すぎ」、「ある意味ホラー」という感想などもあるようで、
それはそれでわかる気がするのだが、
僕の感覚では、編集者の千佳の方が、よっぽど怖い。
不倫がバレているとわかっていても、罪悪感の欠片もないあの図太さ。
めちゃくちゃ恐ろしい女ではないか。
原稿をもらっている漫画家の夫に手を出して(出されて、かもしれないが)、
あの振る舞いは恐ろしすぎる。
千佳目線からすれば、
俊夫との関係は切れていないし、
俊夫の妻は、勝手に男を作って出て行ってくれた。
自分は編集者として、引き続き人気漫画家・早川佐和子の原稿を担当できる。
結局、最後は、全てが千佳にとって良い方向に働いて終わっているのだ。
怖っ・・・・。
映画の中で、
佐和子が「漫画として作り上げていくストーリー」が、
本当に現実の事として起こっている事なのかどうか、
それとも「佐和子の妄想を描いた、ただのフィクション」なのか、
最後まで「どっちが本当なんだろう?」と、
謎解きのように鑑賞者に思わせる演出は、
なかなかに秀逸であると思う。
しかし、この作品は、
「こういうところが日本映画のアカンところやねん」と言いたくなる、
残念な演出が点在していたし、
僕としては、
やはり「千佳がおいしいところ総取り」で、
その部分が胸糞悪く感じてしまい、
高めの評価をつけるには至らなかった。
佐和子、千佳に優しすぎやで・・・。
僕の評価は100点満点で、59点。
ぶっちゃけ見終わった後に、
特に心を動かされるものがなかった、というのが正直な感想。
「不倫はあかん、やっぱり」という教訓を再確認できたくらいかな。
という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。