昨日は自宅で「ブランカとギター弾き」を鑑賞。
イタリア製作でありながら、
物語の舞台はフィリピンで、監督は日本人というユニークな背景を持つこの作品。
フィリピンのスラム街で、
親のいないストリートチルドレンとして、孤独に生活する少女ブランカ。
仕事もない彼女は、
主にスリを働いて、奪った大人の財布からお金を抜き取り、日々を生き抜いていた。
ある日、ブランカは、
孤児を引き取って養子として育てている女優のインタビュー映像をテレビで見る。
その時、ブランカの隣で一緒にテレビを見ていた男性が、
「金があったら、俺もこの女を買えるのに」といったような事を呟く。
ブランカは、男性のその言葉を
「お金を出せば、母親が買える」という意味で解釈してしまう。
そんな時、ブランカは、路上でギターを弾いて日銭を稼いでいる、
ピーターという名の盲目のホームレス男性と出会う。
ある日、ピーターは警察に「ここでギターを弾くな」と言われ、
退去を促されるのだが、
その様子を見ていたブランカは、
ピーターを誘って、今住んでいる町を離れる決意をする・・・・
という、あらすじ。
貧しい暮らしをしている子供たちの話と言えば、
以前にインドの貧困家庭の兄弟の物語である
「ピザ!」を、このブログで取り上げた(リンク先↓)。
https://shingosan.hateblo.jp/entry/2022/02/28/230804
あの映画は、子供たちが、稼ぎが極めて少ないながらも労働をしていて、
ある種の明るさと、たくましさを感じさせる描写が目立つ作品であったが、
この「ブランカとギター弾き」は、
何かと悲しいし、切ない。
感想は人それぞれだと思うが、
僕の目には、ブランカや、ブランカと出会うことになる子供たちが、
ただただ「可哀想」に思えて仕方なかった。
生きるお金を得ていくためには、
窃盗などの犯罪を繰り返すほかなく、
格差社会が提示する残酷な現実の一端を見せつけられる。
途中、ブランカ、ピーター共に
「人生の上昇気流に乗ったか」と思われるような展開が待っているのだが、
それも妨害が入ることによって頓挫。
ブランカは、再び犯罪の道へと戻っていく。
両親に見放され、特に母親の愛に飢えていたブランカは、
ピーターと共にたどり着いた街で、
「お母さん買います」というチラシを作り、
それを街中の壁に貼っていたのだが、
それも後々、仇になる。
とにかく、何をやっても結局うまくいかないし、
とにかく、可哀想。
日本で生まれ育った僕の価値基準からして、
この映画でブランカが体験する事は、
10歳になるかならないかの少女が体験してはいけない事である。
しかし、この映画で描かれているような生活をしている子供たちは、
現実に世界中に沢山いるわけで、
その原因は何か?というと、色々挙げていったらキリがないが、
結局、全部大人たちなのだ。
ブランカの話によると、
ブランカの父は飲んだくれで、いつごろからか家からいなくなり、
母親は男を作って、家を出ていったのだという。
子供を放置して、堕落した生活に溺れていったり、
自分の身勝手な欲望に流されていく大人は、
どこの国にも一定数いるが、
本当に僕はそのような大人達に対して、
なぜそんな子供をないがしろにするような事ができるのか、
さっぱり理解できない。
子供の不幸というものは、
そのほとんどが、大人によって生み出されたものであると思う。
途中、ブランカがピーターに「お金でお母さんは買えないよ」と諭されるシーンがあるのだが、
それに対してブランカは、
「どうして?子供を買う大人はいるのに、
子供は大人をお金で買っちゃいけないの?」と詰め寄る。
これが僕としては、この映画の中で一番刺さったセリフだった。
大人が子供にひどい事をするから、
子供にもこんな発想が生まれてくる、と言えよう。
ろくでもない親に捨てられたブランカであったが、
ピーターという「良識ある大人」との出会いは、ブランカの人生における「希望の光」だ。
僕が昔読んだ、ある本の中に、
「自分の親が、もし良い親だと思えるのなら、それは宝クジに当たったと同じくらい、すごい事と思った方がいい」
という一節があった。
僕個人の話で恐縮だが、
僕自身、少年時代から大人にかけて、
親との衝突はたびたびあったが、
僕を健康に育て上げてくれたことに、本当に感謝しているし、
この「宝クジの当選」を当たり前の事のように決して思ってはいけないと、
今でも心に誓っている。
お金で買おうとしてでも「お母さん」を欲しかったブランカだが、
ピーターとの出会いは、ブランカにとっての「宝クジの当選」と言えるかもしれない。
物語の終盤、
ブランカにとって大きなチャンスとも言える話が、彼女の耳に入ってくるのだが、
そこで最終的にブランカが下した決断に
「子供の純真な思い」が集約されていると言える。
人には、自分のことをいつも気にかけてくれる人間の存在が絶対に必要なのだ。
お金があってもなくても、
そのような存在がいない人間は、
真の意味で幸せになることはできないだろう。
僕にとっては、最後の最後まで、切ない余韻を残したまま終わっていく映画であった。
100点満点で、89点。
という事で、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。