中学1年の時に、音楽の授業で歌のテストがあった。
校歌を歌うテストだったが、
僕が歌い終わった後、
伴奏のピアノを弾いていたN先生が、
「おい・・・君、うまいな・・・」と言ってくれた。
自分の席に戻る時に、すれ違いざまにS君という同級生が「お前、めちゃうまいな・・・」と、僕に呟いてくれたので、おそらく上手く歌えたのだと思う。
僕の中学の吹奏楽部は、当時コンクールに出場すると、まず間違いなく金賞を取るほどのレベルの高いクラブで、
N先生はその吹奏楽部の顧問だった。
N先生が転勤により、僕の通っていた中学校を離れた途端、
吹奏楽部は金賞を取れなくなったので、
金賞を毎回取れていたのは、N先生の指導力があったからこそ、と言っても過言ではないと思う。
そんなN先生に歌を褒めてもらって、僕は嬉しかったが、
その日の昼休み、N先生は僕の教室に訪ねてきて、こう言った。
「なあ、○○(僕の名前)、吹奏楽部に入らへんか?
さっきの君の歌聴いて、先生ビックリしたわ。間違いなく音楽の才能あるわ」と。
予想していなかった「スカウト」だったので、僕は驚いた。
当時の僕は、吹奏楽の楽器をやりたいとは思っていなかったし(高校進学後、結局、吹奏楽部に入ることになる)、
母校の吹奏楽部は実力が高い分、練習も遅くまで残り、厳しいことを知っていたので、
「しんどいのは嫌だなあ」と内心思い、結局その申し出をお断りしたのだが、
あの時のN先生の熱心な勧誘は、今でも僕の心に強く残っている。
この2、3年ほど、歌の練習を定期的に欠かさないのは、あのN先生のお褒めの言葉を思い出す瞬間が、その時くらいから多くなってきたからだと思う。
ろくに練習してなかった頃は、中学当時の美声はどこへやら、というヘタクソぶりだったが、
最近は練習のおかげで、少しはマシになってきたような気がする。
現在の僕は、歌うことで何かしらの対価を戴いた事はないし、今後もそういう事があるかどうかは全くもってわからないが、
歌の練習は続けていこうと思う。
N先生、今でもお元気にされているだろうか。
僕に自信をつけさせてくれたN先生、ありがとうございます。