昨日、9月9日はTOHOシネマズで
「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」を鑑賞。
1969年、音楽史上において伝説として語り継がれる「ウッドストック・フェスティバル」が、
アメリカのニューヨーク州サリバン郡べセルで開催されたのだが、
時を同じくして、ニューヨーク市マンハッタンのハーレム地区でも「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」という音楽イベントが開催されていた。
同イベントは黒人居住地区で開かれた、
まさに「黒人の、黒人による、黒人のための」音楽フェスティバル。
スティービー・ワンダー、B.Bキング、フィフス・エレメント、マヘリア・ジャクソンなどブラックミュージック界を代表するスターが数多く出演した。
このイベントを記録したフィルムは、テレビで放映される事なくお蔵入りとなり、
50年以上もの間、地下室(どこの地下室なのか詳しく触れていなかったと思うが、音楽か映像業界に関する建物の保管庫といったところだろう)で眠っていた貴重映像だ。
当時、観客としてイベントに参加していた人たちや、実際ステージに立ったミュージシャン、イベントの運営に関わった人たちや、ジャーナリストのインタビューを挟みながら、
映像と共に、当時の黒人社会を取り巻く社会情勢を振り返り、再考察するというもの。
僕は、このブログでも何度か言っているように生粋のメタル野郎だが、
ソウルやR&B、ブルースやジャズなども、
メタルほどの知識や聴き込み量は少ないが、昔からけっこう好きだ。
ウッドストックは、ロックなどを中心に洋楽をそれなりに聴いてきている人なら、名前ぐらいは一度は聞いたことがあると思うが、
僕自身、この「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」に関しては、そのような大規模イベントが、ウッドストックと同時期に開かれていたとは全く知らなかった。
そりゃそうだ。
50年間お蔵入りになっていたのだから。
観客の99.999%くらいが黒人。
見渡す限り黒人。
このイベントの前年、黒人への差別反対運動の象徴的存在であった、あのキング牧師が暗殺されたという事もあって、アメリカ社会は大きな動乱と変革の気運に満ち満ちていた。
白人社会の中で虐げられてきた黒人たちの思いが、このイベントに参加したミュージシャン達の魂のこもった演奏と、
それに呼応する観客の熱気とともにビシビシと伝わってくる。
まず、冒頭まもなくのスティービー・ワンダーの異常天才ぶりに唖然とする。
中盤以降あたりでも再び登場するが、
「いったい何なんだ、この人は?」という、あらゆるミュージシャンの中でも群を抜く、別次元レベルのパフォーマンス。
その後、最初の方にも書いたブラックミュージック界を代表するスターたちの演奏が続いていくが、
もう、これがことごとく素晴らしい。
みんな、「黒人としての誇り」全開の、まさに入魂のパフォーマンスで、見ている僕も目頭が熱くなる。
やはり音楽は素晴らしい。
終盤に登場するニーナ・シモンのMCには、
「自分たちの権利と自由を勝ち取るために、力を用いて行動することさえ辞さない」といった類の、過激なメッセージも込められているが、
そんな「決意表明」がステージ上で飛び出すほど、
当時の(おそらく今もそうなのだろう)黒人たちの社会に対する鬱屈感と抑圧感の高まりは頂点に達していたのだ、ということが、
このイベントに参加した人たちの一体感から見て取れる。
こんな素晴らしい、貴重な価値あるライブ映像が50年もの間、誰の目にも触れず眠っていた事に驚きを覚える。
映画の最後の方で、
「このイベントが歴史の一部にならずに、無視されたのは、これが間違いなく歴史の一部であったからだ」(原文をそのまま覚えていないが、こんなニュアンスのコメント)
というような、逆説的に真理をついたコメントが語られるが、
権力を持つ者(白人側と言っていいだろう)は、この団結と結束の空気感がテレビを通して、アメリカ全土に影響を与える事を恐れたのだろう。
ブラックミュージックが好きな人は絶対見たほうが良いと思うし、
メタル野郎の僕が大感動したくらいだから、音楽好きは是非見てほしい。
100点満点で95点。
音楽の力はすごい。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。